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医院開業コラム

開業のタネ

イソノ医院の承継記

イソノ医院の承継記 第12回(最終回)

イソノ家のその後

  • 医業承継

2020.06.16

マスオの独立後、これまで公立病院に勤務していた内科医のハナザワが、マスオの後任としてイソノ医院の理事に就任。ノリスケの後任が見つかるまで再びサザエが事務長として勤めることになった。マスオがハナザワへの引き継ぎをスムーズに行ったことで、イソノ医院は患者離れを防ぎ、売上を維持することに成功した。

また、女医であるハナザワは女性スタッフから相談されやすく、スタッフマネジメントが円滑になり、むしろ離職率の低減にもつながった。イソノ医院は今、産婦人科の分院を設立する動きがあり、その際には現在他クリニックで勤務しているワカメを分院長とする予定である。

一方、ナカジマ医院のM&Aを無事に終えたマスオは「医療法人MASUO」を設立し、マスオ医院の新院長となる。ノリスケは事務長として、経理事務や、マスオ院長とスタッフのパイプ役として奔走。初めのうちは、ナカジマ医院の方針に長年慣れ親しんだ患者さんやスタッフとの関係に戸惑うマスオであったが、閉院前のナカジマ医院で診療しながら引き継ぎを行ったことが功を奏したのか、今のところ大きな問題に発展するトラブルはない。ナカジマ医院に比べると売上は一時的に落ち込んだものの、徐々に回復している。

イソノ家は各々が別々の道に歩むことになったが、以前と同様に一家は一緒に暮らしている。当初はマスオの独立に反対していたサザエやカツオも今ではマスオに理解を示しており、微妙な空気は払拭された。マスオとサザエの夫婦関係も相変わらず円満で、あの時以来、夫婦ゲンカもない。

タラちゃんは無事に国立大学の医学部に合格し、医師を目指すべく学業に励んでいる。カツオは、将来イソノ医院をタラちゃんに継ぐつもりである。しかし、タラちゃんは本当にイソノ医院を継ぐのか? 実の父親が経営するマスオ医院を継ぐのではないだろうか? ――タラちゃんがどちらを選ぶか、最終的には分からない。

天国にいるナミヘイは、イソノ医院やマスオ医院の行く末を空の上からただ見守っている。何か問題があれば、また誰かの夢の中に出てきて説教するつもりであろう。

 

第1~11回のまとめ

「イソノ医院の承継記」は、これで終わりです。医療法人の親族間承継、M&A、医療法人の運営等における重要なポイントを、物語形式でお伝えさせていただきました。

最後に、第1~11回までのおさらいをしておきましょう。今まで「イソノ医院の承継記」をご覧いただきまして、ありがとうございました。

【第1回】どうなる?イソノ医院の後継者問題

  • 後継者は簡単には見つからない。
  • 承継に対する親子の気持ちには温度差がある。
  • 後継者選びは早めに計画しておき、医院を継ぐ意志のある子どもに対し、後継者としてふさわしいように育成する。

 

【第2回】ナミヘイ、医療法人を検討する

  • 一定の利益を超えると、個人医院より医療法人のほうが税金対策上有利になる。
  • 医療法人は、病院や医院・クリニックが永続的に継続していくために政策上認められた法人制度。
  • 医療法人化しておいたほうが、事業承継の際にスムーズ。万が一の時にも臨機応変に対応できる。

 

【第3回】フネの決意。医療法人を売ってください。

  • 医療法人の認可は、医道審議会を経てからでないと前に進めない。毎回の認可が出る時期は限られている。
  • 医療法人のM&Aは多くのブローカーが暗躍し、成功報酬が数百万~数千万円と多額になることもあるので注意。
  • 医療法人の事業承継には、行政の許認可が深く関わってくるので注意が必要。行政手続きを経てからでないと診療は開始できない。

 

【第4回】ナミヘイの死。あるはずの遺言書がない

  • 開業医は比較的財産の蓄積が多額なため、遺産相続の際に相続税がかかるケースが多い。
  • 相続の際に遺言書がない、もしくは自筆証書遺言を紛失した場合は、法定相続人間で遺産分割協議が必要。
  • 相続の事前対策としては遺言書や生前贈与などがおすすめだが、日々診療に忙しい医師はそこまで考える時間がないケースが多々見られる。

 

【第5回】カツオは院長、サザエは事務長

  • 相続税対策と事業承継対策は、同時並行で行わなければいけない。
  • 医院を継いだ新院長は、勤務医時代は経験しなかった労務管理や会計管理の問題に直面する
  • 相続や事業承継に関する手続きは、失敗や遅滞が許されない。

 

【第6回】マスオが突然やってきた

  • 医療法人の理事は、理事長を含め最低3名以上が必須。
  • 医療法人の理事は役員報酬を受け取ることができるが、将来の役員退職金にも影響するので慎重に検討する必要がある。
  • 役員報酬や役員退職金の設定は、税務・労務・法務ともに手続きが必要。

 

【第7回】ノリスケ、事務長となる。そして赤字転落。

  • 売上総利益に対する人件費の割合である「労働分配率」が高すぎないようにする。
  • 日頃から税理士による会計報告や、改善の提案をきっちりとレビューしておくことが重要。
  • 月次決算報告書で、異常な数値や比率があれば改善するようにする。

 

【第8回】ノリスケの野望 ~カツオの解任へ

  • 取引先の接待ではなく、従業員のみでの飲食代は交際費には該当しない。また、福利厚生費も特定の従業員に対するものは該当しない。つまり、基本的に個人的な飲食は経費にならない。
  • 経営赤字が続くと銀行からの評価が下がり、追加の借入が難しくなる。
  • 役員給与や諸経費を減らして黒字化しても、働くモチベーションを下げて最悪退職につながるので注意が必要。

 

【第9回】カツオ理事長解任か? 継続か?

  • 医療法人の社員とは、一般企業でいう社員のことではなく、医療法人の重要事項を決定する議決権を持つ人。
  • 株主と社員の異なる点といえば、出資(基金)の有無や金額に関わらず、1人1個の議決権になることと、配当が禁止されている点。
  • 社員総会では、理事長や理事が解任されることもある。

 

【第10回】マスオ退職、独立を決意

  • 医療法人M&Aの譲渡価格は、不動産や医療設備だけでなく「営業権(のれん)」という“医院が長年築いてきた信用”という評価も加算される。
  • M&A開業であれば、建物も医療機器も一通りそろっているため必要資金を抑えられ、しかも患者さんとスタッフの双方を引き継ぐことができる。
  • 譲渡価格を売主と買主だけで決めるのは、ほぼ不可能。客観的な調査(デューデリジェンス)が必要になるので、M&Aに詳しい専門家を介すること。

 

【第11回】マスオ院長になる

  • これまで勤めてきた医院を退職する際は、円満退職を心がけ、適切なタイミングで退職意志を告げる。
  • 承継開業は、前院長の信頼や実績も引き継ぐことになるので、患者さんもスタッフも前院長と比較しがち。
  • 患者さん離れ防止、スタッフさんとの関係構築のためにも、スムーズな引き継ぎを心がける。

「イソノ医院の承継記」終わり

 

税理士笠浪真のワンポイントアドバイス

「イソノ医院の承継記」でお伝えしたように、医療法人の相続、事業承継、M&Aなどは専門性の高い分野であり、専門家が介在するのが一般的です。

税理士法人テラスは医科歯科クリニックに特化しており、特に医療法人の税務全般に実績があります。他の会計事務所でも医業に対応していますが、医業に特化した相続・承継問題を扱っている事務所はほとんどありません。これは医療法、民法、相続税法などの法律すべてに精通していることが求められ、加えて経験が豊富な税理士がほとんどいないためです。

出資持分評価の対策や持分なし医療法人への移行などは医療法人独特の対応で、経験がないとかなり厳しいです。また、遺産分割についても医療法人が絡んだケースを扱った税理士はほとんどいません。対して、当社はクリニックのあらゆる税務・法務・労務の問題に対応してきたため、相続・承継に関する実績も積んでいます。対応事例も多く、社内でノウハウが蓄積されています。

事業承継は親子承継だけでなく、承継開業を希望する医師が増えていることからM&Aも近年ニーズが高まっています。M&Aは医療業界の豊富な経験と実績、高い情報分析力、労務や法務などの各専門分野とのネットワークが求められ、難易度が高めです。

しかし、当社はM&Aに関しても実績とノウハウが蓄積されております。当社には税務や法務、労務すべてワンストップで対応できる体制を整えており、専門家とのネットワークも強いため、問題なく対応できます。

開業医の先生の場合、「患者さんの命のため、笑顔のため」と言って、高齢になっても診療を続けるケースが多いです。しかし、生涯現役を目指すにしても、万が一のための事業承継のプランニングは欠かせません。後継者不在であっても、今では承継開業を希望する医師が増加しています。そのため、もし親子承継ができなくても、M&Aという方法で解決できるのです。

ホスピタリティが高い先生のクリニックの事業承継をサポートすることは、地域医療の存続に欠かせません。医院の事業承継・相続対策に関しては、ぜひ税理士法人テラスにご相談ください。

※このコラムは、2020年6月現在の情報をもとに執筆しています。

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執筆者紹介

笠浪 真

笠浪 真
(かさなみ まこと)

税理士法人テラス 税理士・MBA

京都府出身。国立滋賀大学経済学部卒業の後、同大学院にてMBA取得。在宅・特別養護老人施設にて、介護士として医療福祉の現場に携わり、会計事務所・法律事務所・コンサルティング会社を経て、税理士事務所を開業。これらの経験を、さらに医療の現場に役立てたいとの思いから、慶應義塾大学大学院医療マネジメント専攻にて、医療経営を学び直す。平成25年「医師からファーストコールされる存在」として、病院・診療所・歯科医院の会計に専門特化した税理士法人テラスを設立。経営理念に共感した医師・歯科医師より、多くの支持を得る。
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