医院開業コラム
トレンドウォッチャーによる医療ITスマート実況 第2回
2024.09.10
クリニックの基幹システムである電子カルテは、ようやく普及率が50%(※)に到達しました。しかし、政府は「医療DX令和ビジョン2030」にあるとおり、全国医療情報プラットフォーム、電子カルテデータの標準化実現のため、電子カルテ導入率100%を目指しています。今回は、電子カルテ市場の変化と今後の見通しについてお伝えしていきたいと思います。
※参照:厚生労働省(電子カルテシステム等の普及状況の推移)
電子カルテが市場に出てきて四半世紀が経ちますが、これまで約10年サイクルで大きく市場が変化してきたように思います。まず「レセコン一体型電子カルテ」、次に「クラウド型電子カルテ」、そして現在登場しているのが「予約・問診・会計(決済)まで一気通貫で利用できる電子カルテ」です。この市場変化の波を受け、シェアや売れ筋メーカーも大きく変化してきました。
ここから2030年の電子カルテデータの標準化に向けた各社の対応状況により、メーカーの統廃合や売れ筋メーカーなど、市場性が変化してくると想定されます。このような市場性を踏まえ、電子カルテのトレンドを4つの観点から細かく解説していきます。
まずはデータの保管について、見ていきましょう。「オンプレミス(オンプレ)」と「クラウド」はシステムの管理・運用形態の代表格ですが、現在は両者の線引きは、あまり意味を持たなくなっています。オンプレ型とクラウド型の両方の機能を備えた「ハイブリッド型」が登場したことで、純粋なオンプレ型メーカーはごく少数となり、この切り分けはあまり意味を成さなくなったのです。
そもそも「クラウド型がいい」という声を掘り下げていくと、多くの場合「院外から操作できる」「価格が安い」の2点に行き着きます。しかし、この2点はクラウドだからではなく、“メーカーによる差”です。
2. 予約から会計までの機能
次に、カルテのデータを管理する以外の機能です。前回のコラムでお伝えしたとおり、予約システム・レジ精算機を導入するクリニックが非常に多くなったことから、これらの機能を搭載した電子カルテがトレンドといえます。このような“一気通貫のシステム”は、予約・カルテ・精算など本来は別システムになるデータが一元管理されているため、シームレスに連携できます。そして、最大のメリットは導入コストが抑えられることです。
デメリットとしては、予約やカルテなど個々の機能が専門メーカーや老舗メーカーに比べて劣る部分があることが挙げられます。例えば「保険と検診、自費メニューなど複数の予約枠を並列に表示して全体の予約の管理をしたい場合」「予約枠数と直来(予約なしで来院する患者さん)枠数を分けて管理する機能」「検査技師や施術担当者と部屋・機器を連動して管理する機能」などは、予約専門メーカーでないと対応できないことが多いです。また、患者さんとの接点が限定される点も重要なポイントです。一気通貫型の多くは専用アプリやWebページのみの活用となり、今や大多数の方が使用される「LINE」などと連携して患者さんとの接点を増やす仕組みなどについては、一歩劣るといえます。
3. 医事機能(レセコン)
電子カルテには、医事機能(レセコン)が必須です。医事機能は、カルテの記載以上に業務効率を大きく左右する大事な部分となります。病院には医事課がありますが、分業なことからカルテの選定時に医事業務を細かくイメージできない先生が多くいらっしゃいます。そのため「どれも同じ」となりやすく、前述の目立つ機能に目が行きがちです。また、メーカー側のプレゼンも、医事機能をほとんど説明しないケースが増えています。
しかし、実際には事務員の業務は多岐にわたります。残業や業務の煩雑さから、離職リスクが高まることも懸念点のひとつです。医事機能については、具体的に以下の項目を比較してみることで差が見えてきます。 (さらに…)
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