医院開業コラム
看護師採用のプロ直伝 採用NEW STANDARD 第8回
2025.07.11
これまでのコラムでは、求職者の行動に合わせた情報発信や採用ジャーニーの考え方などを通じて、自院の魅力を伝える方法を解説してきました。しかし、良い情報を出したとしても、求職者に選ばれるとは限りません。大切なのは、他院と比較されたときに自院がどう見えるかです。
今回のコラムでは、一般的なマーケティングで用いられる「フレームワーク」を採用活動に転換し、採用における競合分析の実践法を解説します。フレームワークとは、目的の達成や課題を解決するための枠組みのことです。近隣の医療機関がどのような採用をしているのかを調べることで、自院の採用ブランディングや競合優位性の作成に役立ちます。
この考え方を理解しておきたい最も良いタイミングは、クリニックのオープニングスタッフ募集を行う際です。これから開業される方は、ぜひオープン前に「どのような組織づくりを行うべきか」を、このフレームワークを参考に考えてみてください。すでに開業中の方は、現在の自院・自社に当てはめながら参考にしていただけると幸いです。
採用活動の第一歩は、自院がどう見られているか(もしくは、どう見られたいか)を客観的に理解することです。ここで「3C分析」と呼ばれる考え方が役立ちます。ビジネスでは定番の手法ですが、採用に応用することで、自院の立ち位置が整理できます。
「3C」とは、以下の3者の頭文字です。
・自社=自院(Company):自院の特徴、働く環境、理念、待遇など
・顧客=求職者(Customer):求職者が求めている条件、価値観、働き方
・競合=他院(Competitor):近隣の医療機関や介護施設が行っている採用活動
【3C分析】
この3者を並べて考えてみると「自院では当たり前だと思っていたことが、実は強みだった」「競合はこういう点を前面に出しているから、同じように打ち出しても埋もれるかも」といった“採用ブランディングの種”が浮き彫りになります。
例えば、自院はベテランと若手のバランスが良く、チームで看護にあたる文化が根付いているとします。もし競合が一人ひとりの裁量が大きい働き方を押し出しているなら、対照的な支え合う働き方を強みとして発信することで、差別化につながります。
大切なのは、競合と同じ土俵に上がらないことです。まずは、自院・求職者・他院の3者を紙に書き出し、整理してみることから始めてみましょう。そこから、自院が選ばれる理由の輪郭が見えてきます。
採用における課題や可能性は、自院の中だけを見ていてはなかなか気づけません。そこで役立つのが、内部と外部の環境を4つの視点で整理する「SWOT分析」です。この分析では、次の4つの切り口で考えます。
・強み(Strength):定着率が高い/職場の人間関係が良好/教育体制が整っている
・弱み(Weakness):認知度が低い/採用にかけられる予算が少ない/SNSなど広報に弱い
・機会(Opportunity):近隣で競合の退職者が多い/求人検索で地域需要が高まっている
・脅威(Threat):他院が高給与で大量採用している/大手医療法人の進出 など
【SWOT分析】
自院の中と外を分けて考えることで、どの強みを、どのタイミングで活かせばいいかが見えてきます。例えば、SNSの発信に不慣れなことが弱みだったとしても、競合が発信していない場合は逆に良い機会となります。このように、強みと機会を掛け合わせることで、採用戦略の“勝ち筋”が明確になるのです。
SWOT分析は、外注しなくても自院スタッフと簡単に始められます。まずはホワイトボードに4つのマスを描き、率直な意見を出し合ってみましょう。それだけでも、大きな発見があるはずです。
自院の採用活動で忘れてはならないのが、どのような人に来てほしいのかを明確にすることです。そこで、マーケティングで使われる「STP」の考え方を採用活動に置き換えることが有効になります。
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