医院開業コラム
トレンドウォッチャーによる医療ITスマート実況 第6回
2025.06.11
ここ数年で”医療DX”という言葉が浸透し、よく耳にするようになりました。それまではデジタル化、IT化、ICT化など、さまざまな言葉が使われており、指す意味合いもまちまちでした。では”DX”については、どうでしょうか。企業、医療機関の方でも「便利なツールを導入すること=DX」となっているケースは実は多いのではないでしょうか。
今回は、DXの目的と課題を明らかにするとともに、システムを導入する際の選定基準について解説します。
クリニックにおけるDXとは、単に便利なシステムを導入することではなく、システムの導入によって課題を解決し、経営安定や改善に寄与できる変革を指します。時代や患者ニーズの変化、そして行政施策への対応といった背景から、クリニック経営に直結する重要な取り組みとなっています。
DXが必要とされる主な目的は以下のとおりです。
1. 業務効率化と属人化の削減
労働人口減少による人材難が医療業界でも問題となっており「採用が進まない」「採用してもすぐに辞めてしまう」といった悩みが多く聞かれます。アナログ業務が多く、標準化されていないと、特定のスタッフに業務が依存してしまいます。そのため、引き継ぎが難しく、教育コストが高くなる可能性があるのです。
また、DXにより業務をシステム化・標準化することで、業務の属人化を減らし、誰でも理解できるようマニュアル化・仕組み化を進めることができます。これにより業務効率が向上し、スタッフの採用率アップにもつながります。例えば、電話での予約受付や、紙の問診票の打ち直し、現金の受け渡しといった手作業の多い業務を、システムで効率化することが可能です。
2. 患者満足度の向上と患者減少問題への対応
長い待ち時間や電話予約の手間は患者満足度を下げる要因となり、ネガティブな口コミにつながる恐れがあります。DX化によって待ち時間の短縮や予約の取りやすさといったアクセシビリティを向上させれば、患者満足度を高めることができます。これにより患者数の減少を防ぎ、経営悪化を回避することが可能です。
近年では、キャッシュレス決済への対応やオンライン診療の導入など、患者ニーズの変化に応じた対応が「選ばれるクリニック」になるために必要とされています。ホームページでのクリニックの特徴や強みのアピール、LINEなどのツールを利用した再診率向上の取り組みも重要です。
3. 行政施策への対応
政府は『医療DX令和ビジョン2030』を打ち出し、医療のDX化を進めています。そのため、オンライン資格確認や電子カルテの標準化といった施策への対応が必要です。DX化を進める医療機関には診療報酬の加算が設けられており、対応しなければ診療報酬が減少する可能性があります。したがって、行政施策への対応はクリニックの存続・経営安定のために不可欠です。
クリニックのITシステム、特に受付周りのシステムは種類と組み合わせが増えており、選定が非常に大変になっています。システム選定においては、単にシステムの機能や価格だけを見るのではなく、クリニックの現状や目指す姿に合わせて慎重に進めることが必要です。
重要なポイントは以下のとおりです。
1. システム導入の「目的」と「課題」を明確にする
この記事をシェアする