医院開業コラム
開業×人材×経営の三重奏 第2回
2026.03.06
開業準備中の医師から「この物件、どう思いますか?」と相談を受けることがあります。不動産業者から勧められた物件の資料を見せていただいたところ、駅から徒歩3分、築浅、賃料も予算内。一見すると、条件は申し分ないように思えます。
しかし「このエリアで開業しようと思った理由は?」と質問すると、明確な答えが出てこないことがあります。「不動産業者に紹介されたから」「家から近いから」──こういった理由で開業場所を決めてしまうケースは、実は少なくありません。
開業場所の選定は、クリニック経営の成否を大きく左右します。どれだけ優れた医療技術を持っていても、患者さんが来なければ経営は成り立ちません。一方で、立地選びに成功したクリニックは、開業初月から黒字を達成することも珍しくないのです。
第2回では、エリア選定・物件選定・診療圏調査という3つのステップを通じて、失敗しない開業場所の決め方をお伝えします。
開業準備において、やり直しがきかない決断がいくつかあります。その筆頭が、開業場所です。設備や内装は、後から変えられます。スタッフが合わなければ採用を見直すこともできますし、診療時間も柔軟に調整可能です。しかし、開業場所だけは簡単に変えられません。賃貸借契約を結び、内装工事に数千万円を投じた後では、移転は容易ではないのです。
また、立地は集患力に直結します。「良い医療を提供していれば、口コミで患者さんが自然に集まる」という考え方もありますが、それには時間がかかります。開業初期のキャッシュフローを考えると、立地による集患力は無視できない要素です。
さらに、立地は賃料という固定費にも影響します。この判断を誤ると、経営を圧迫し続けることになります。つまり、開業場所選びとは、集患力・固定費・将来性のバランスを見極める“経営判断の第一歩”なのです。
開業場所選びを成功させるには、エリア選定・物件選定・診療圏調査の3ステップで進めることが基本です。各ステップで押さえるべきポイントを、順に解説していきます。
【開業場所を決める3ステップ】

開業場所を決める第一歩は「どのエリアで、どんな診療科で、どのくらいの規模で開業するか」という大枠を固めることです。具体的な流れを確認していきましょう。
開業エリアの候補を挙げる
まず、開業したい「大まかなエリア」をいくつか挙げましょう。この段階では、詳細なデータ分析は必要ありません。以下のような視点から、直感的に候補を考えてみてください。
①自分に縁のある場所
自分が住んでいる場所、育った場所、家族が住んでいる場所などから候補地を絞りましょう。長く診療を続けていくには、そのエリアに愛着を持てることが大切です。
②今診ている患者さんが多くいる場所
「勤務医として診療している患者さんが多く住んでいるエリア=すでに信頼関係を築いている患者さんがいるエリア」です。そのため、開業初期から一定の集患が見込めます。
③自分がやってみたいと思う場所
「この街で医療を提供したい」と心から思える場所や、自分の経営理念・診療スタイルに合っていると感じる場所を整理します。
この段階では、「◯◯区」「◯◯市」「◯◯駅周辺」といった大まかなエリアを、2〜3カ所程度挙げられれば十分です。
診療科と規模を決める
次に、診療科(内科、小児科など)、専門性、診療時間、診療方法、クリニックの規模を明確にします。一般的な目安は、小規模クリニックで20〜30坪、無床診療所で30〜50坪、専門クリニックで40〜60坪です。
大まかな希望エリア、診療科、規模を固めたら「◯◯区辺り、内科、40坪程度」といった条件を開業支援業者に伝え、物件探しと診療圏調査を依頼します。開業支援業者から候補物件の提案を受けたら、以下のポイントをチェックしながら絞り込んでいきます。
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