医院開業コラム
クリニック空間設計思想~共通の軸と、科目別アプローチ~ 第1回
2026.04.30
今回からクリニック設計のコラムを担当させていただく「株式会社ラカリテ」の髙橋と申します。株式会社ラカリテは、東京・名古屋・大阪を中心に年間60~70件ほどのクリニック設計に携わっている“クリニックに特化した”設計事務所です。
昨今、クリニックにも競争激化の波が訪れ、開業すれば安泰という時代ではなくなりました。特にコロナ禍を経て、患者さんのクリニックに対する考え方や受診傾向、クリニックが導入する医療システムにも大きな変化が現れています。
我々ラカリテはドクターのニーズだけではなく、開業後の患者さんのニーズを先取りした設計を目指して、日々設計に取り組んでおります。第1回では、開業までの流れと内装工事・建築工事の違いを「設計の観点」から詳しくお伝えしていきたいと思います。
設計の立場で見ると、クリニック設計の受注形態は、大きく分けて「設計施工」と「設計監理」の2つです。ドクターの皆さま方の中で、この2つを詳しく理解できる方は少ないと思いますので、少しご説明いたします。
①設計施工
・設計業務を行い、施工(工事)まで一括して請け負う
・契約:設計施工を行う会社1社と契約を結ぶ
設計施工のメリットは、設計者と施工者が1つになることで、設計図がある程度まとまった段階で見積もりの作成に着手できる点にあります。つまり、最終図面が固まった段階で、ほぼ正確な見積書を提示できるのです。
テナントビル内で開業を希望される場合、弊社では内装設計施工契約を結びます。弊社の見積もりの依頼先(下請会社)は、今まで何年、何十年とお付き合いしている会社がほとんどです。設計者の意図をある程度把握しているため、彼らが見積もりの作成にかかる時間も短く、見落としも少なくなります。施工に関しても、これまで培ってきたクリニック施工の経験に基づき、自発的に細かい部分まで事前に検討してくれるケースが多いです。
②設計監理
・設計者と施工者が分かれる
・契約:設計者と施工者の2社と設計契約・施工契約(工事請負契約)を結ぶ
設計者と施工者が分かれているため、設計図面がほぼ完成段階まで進んだ状態から施工業者へ見積もりを依頼することになります。見積もりが作成されるまでには、2週間~1カ月程度の期間が必要です。設計者にとって初めて組む施工者(ドクターや紹介者からの推薦が多い)の場合、設計者は見積もりの項目抜けや見落とし、各材料の数量に間違いがないか、目を皿にしてチェックする必要があり、さらに時間を要します。
この見積もりチェックが甘いと、初顔合わせとなる施工者は、設計者が品質管理にどのくらい厳しいのか見当がつきません。昨今の材料費や労務費の高騰もあり「施工者コンペをしても、以前ほど金額が下がらない」と聞く機会も多いです。特に内装工事の場合は、テナント契約時や内装着工日より家賃が発生する場合が多いことから、時間のロスが無駄な家賃の発生につながりやすくなります。
一般的に、内装工事期間は標準で1カ月半~2カ月程度(150坪を超える場合は3カ月以上)かかります。エリアにより多少の違いはありますが、開業予定日の1カ月前には内装工事を完成させ、保健所の検査を受けなければなりません。保健所の検査にパスしなければ、開業が最低でも1カ月は伸びてしまいます。そのような背景から、弊社では「なるべく効率よく設計・着工・完成の引き渡しまでスムーズに行いたい」「ドクターの費用負担を軽減したい」という思いで、内装工事は設計施工で受注しています。
設計と施工を分けて内装工事を行う設計事務所もありますが、この場合は着工までのスケジュールに余裕を持つ必要があります。内装工事の標準スケジュールとしては、開業の1年前から最短でも6カ月前(かなりタイトなスケジュールになりますが)には物件を絞り込み、保証金、賃料、共益費、B工事区分、サブリース期間などのテナント契約の条件を詰めておくことが必要です(B工事区分、サブリース期間については今後のコラムで詳しく解説します)。
下記は内装工事のスケジュール例です。今後、開業する際の目安にしていただければと思います。
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