医院開業コラム
クリニック空間設計思想~共通の軸と、科目別アプローチ~ 第2回
2026.05.27
前回のコラムでは、開業までの流れと、設計施工・設計監理ならびに内装工事・建築工事の違いについて説明しました。なかでも特にお伝えしたかったのは「クリニックの設計は一般の店舗やオフィスなどとまったく異なる」点です。
クリニックは単に、おしゃれな空間や患者さんが来たくなる空間を作ればいいわけではありません。医療法や建築基準法、消防法、自治体条例など、さまざまな法令や基準を守りながら計画する必要があります。
実際、弊社へご相談いただくケースでも、ビルのデザインや立地だけを見て提案と契約を進めた結果「消防法上の用途によりクリニックが開業できない」「消防法上は用途変更が可能でも莫大な追加金額がかかる(例:全フロアー、テナントに感知器やスプリンクラーを設置)」といった事態が起きました。
また、契約締結後に解約する場合、違約金や余分な家賃負担の発生、事業計画の見直しに伴う金融機関との再調整、開業延期など、多大な影響を及ぼします。そのため、クリニックの内装はデザインを決めてから法令を確認するのではなく、法令を前提にデザインを組み立てることが重要です。
そこで今回は、クリニック設計に関係する法令と、その考え方を解説します。
クリニックの設計には、主に以下の条例や基準が関係します。
クリニックの設計は見た目だけでなく、安全性、衛生性、使いやすさ、法令適合性を同時に考えなければなりません。テナントビルや医療モールに入居する場合は、以下のようなビル全体のルール確認も必要です。
■営業時間の制限
・夜間は〇〇時までしか営業できない
・大型ショッピングモール内にあるため、日曜・祝日も営業しなくてはいけない
・建物に出入りできない時間帯がある
■屋外看板サイズや位置の制限
・指定の位置以外に設置できない
・色の指定がある
・窓面にシートサインを貼ることが禁止されている
■設備の制限
・給水、排水位置が決まっており、希望の位置に手洗い、流し台、トイレの設置が困難
・電気容量が足りず、希望する医療機器の導入が困難
・空調室外機(エアコン)の設置場所が指定されていて搬入に余計なお金がかかる
■B工事(特定の工事項目についてビル側の指定工事業者が行う工事)の発生
・B工事は依頼している内装工事業者では許可されない
・特に、消防設備(感知器、スプリンクラー、非常通報装置)が対象になりやすい
・一部では電気工事や空調換気設備工事も該当する
・一般的に内装工事業者の見積額の2~3倍程度の金額がかかってしまうケースが多い
・内装工事図面が完成していないと費用を算出してもらえない場合が多く、見積書がそろうまでの時間が長い
・開業までのスケジュールがタイトな場合、B工事の見積書が届いたらすぐ契約・発注をしないと間に合わない
・事業計画の予算をオーバーし、追加融資や自己資金を余分に調達する場合が多々あるので注意が必要
このように、設計の際は法令だけではなく、建物ごとの条件を踏まえて進めることが必須なのです。
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