医院開業コラム
看護師採用のプロ直伝 採用NEW STANDARD 第6回
2025.05.14
当コラムでは、これまで医療・福祉業界における人材採用のノウハウを、人材紹介や求人媒体、SNSを活用したソーシャルリクルーティングといった“手段”に着目してお伝えしてまいりました。
昨今の採用市場は、採用手法の多様化がトレンドです。求人媒体に“出稿するだけ”、人材紹介に“依頼するだけ”などの「手段先行型」の採用戦略では、人材採用に関する抜本的な解決にはならないことを感じていただけたかと思います。
第6回では、これまでの手段を有効的に活用するための基礎的な考え方をお伝えします。前回までのコラムでも軽く話題に出ていますが、その肝になるのが「ペルソナ」です。言葉自体は聞いたことがあるけれど、あまり分かっていないという方も多いのではないでしょうか。
まずは、そもそもペルソナとは何か、人材採用にどのように応用するのか、ペルソナの基本を解説していきます。
第5回でも説明したとおり、ペルソナとはサービスや商品を使用するユーザー像を仮想的に設定した人物モデルのことです。年齢や職業といった基本情報に加え、住んでいる地域、悩みなど詳細に設定するため「特定の個人をイメージしやすい情報」といえます。どのような情報で構成されているのか、ペルソナの一例をご紹介します。
・名前:山田 花子
・性別:女性
・年齢:40歳
・居住地:大阪府大阪市
・住まい:賃貸マンション
・年収:400万円
・家族構成:夫・子ども1人(10歳)
・仕事:看護師(16年目、産休・育休のブランクあり)
・よく見るSNS:Instagram、YouTube
・現在の悩み:経済的不安。大学など子どもの進学が現実的になり、学費や生活支援の費用が今後多くかかること。看護師の仕事は、直接的に人の役に立っている実感があるのでやりがいを感じているが、条件面などの理由から今の職場で仕事を続けるか迷っている。
また、ペルソナと混同されるワードに「ターゲット」があります。ターゲットはペルソナと異なり「複数の人物が該当する情報」です。ターゲット設定の一例をご紹介します。
・年齢:20代
・性別:男性
・居住地:大阪府
・職業:看護師
・行動特性:週末はよくお酒を飲む
両者を比較すると、情報の濃度は圧倒的にペルソナのほうが高いことが一目瞭然だと思います。ペルソナとターゲットは目的・施策によって役割が異なりますが、求人広告を作成する際は、ペルソナを設計することが大前提です。次に、その理由を見ていきましょう。
よく「就職・転職活動は結婚と同じ」といわれます。それならば、求人広告は求職者への「ラブレター」だと筆者は考えています。
皆さんは、恋人や結婚相手を探すときに、手当たり次第に自身の想いを伝えるでしょうか。きっと運命の人がいて、自分を恋人として選んでもらうために自分自身をアピールしたり、ラブレターを書いたりすると思います。そして、2人の気持ちが通じ合ったときに、恋人として成就するのが一般的だと思います。
採用に置き換えると「自社を選んで応募してほしい!」と考えたことがある経営者・採用担当の方も多いでしょう。どのような人でも当てはまり、誰に向けたメッセージなのか分からない求人情報では、本当の意味での採用マッチングが成就しにくい環境になっている可能性が高いでしょう。
つまり、恋愛に近い、自社を選んでもらえるような採用活動を実現するためには、個人情報の濃度が高いペルソナが必要になるのです。
ここまでご覧になって、自社・自院に置き換えたペルソナのイメージを頭に思い浮かべている方も多いのではないでしょうか。もし看護師や介護士としての手技・スキルが一番に思い浮かんだ場合は、人材採用のペルソナとして適切ではありません。結婚・恋愛に置き換えると、相手を年収・学歴・身長・外見だけで判断していることに近いからです。
思い浮かべるべきは「どのような想いを持って医療・福祉業界に従事しているのか」。そして「その想いを叶えられない要因」です。求職者がどのような“ペインポイント”を持っているか、自社に転職することによってそれをどのように解決できるのかを言語化し、情報発信することが採用活動であり、求人広告の役割であると私たちは考えています。
続いて、自社採用におけるペルソナのイメージを求人広告の作成に活かすために「求人コンセプト」を設定します。求人コンセプトとは、ペルソナの課題解決の軸となる情報です。採用ペルソナと求人コンセプト、この2つの情報がそろえば、求人広告のクオリティが大きく改善されます。
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