医院開業コラム
クリニック経営の次のステップ ~法人化・分院展開という選択~ 第1回
2025.08.08
『医療法人』という言葉を耳にする機会は多いけれど、「その種類はそれぞれどう違うの?」と思ったこと、ありませんか?実は、法人の種類や制度の違いが、経営や事業承継、税金対策にも深く関わってくるんです。今回は、そんな医療法人の仕組みや制度の背景をわかりやすく整理しながら、実務にどう影響するのかを見ていきます。
医療法人には大きく分けて「社団」と「財団」の2つの形態があります。現在の日本で主流となっているのは医療法人社団ですが、かつては医療法人財団も一定数存在していました。両者の違いは、設立の目的と構成のあり方にあります。
【医療法人社団と医療法人財団の違い】
医療法人社団は、「人の集まり(社団)」によって構成される法人です。複数の社員(通常は医師や歯科医師)が共同で出資し、病院や診療所などの医療機関を開設・運営することを目的に設立されます。組織運営には、社員総会と理事会があります。社員総会は、法人の最高意思決定機関で、社員が出資額の多寡によらず1人1票の議決権を持ち、重要事項を決定します。理事会は、原則、理事3名以上、監事1名以上で構成され、理事が日常的な業務をし、法人の運営を行います。社員が法人の意思決定に参加できる点が特徴で、柔軟で実践的な運営が可能です。出資持分の有無によって、経営権や財産権の扱いにも違いが生まれます。現在設立される医療法人のほとんどがこの「社団」形式です。
医療法人財団は、財産の寄附によって設立される法人です。個人や団体が一定の財産を拠出し、それを基に公益的な医療活動を行うという考え方に基づいています。医療法人社団と異なり、意思決定を行う構成員という概念がなく、寄附された財産の運用が重視されます。そのため、組織の変更や柔軟な運営には不向きで、法人の設立・承継も限定的です。
医療法の改正により、2007年4月1日以降、新たに医療法人財団を設立することはできなくなっています。既存の財団型法人も非常に数が少なく、運営の柔軟性から、社団型へ移行する例もあります。こうした制度の背景を理解することは、医療法人の本質に迫る上で重要な視点となるでしょう。
医療法人には、「出資持分のある法人」と「出資持分のない法人」が存在します。これは法人の財産に対する構成員の権利の有無を指すものであり、経営や承継に大きな影響を及ぼします。
この記事をシェアする