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医院開業コラム

開業のタネ

イソノ医院の承継記

イソノ医院の承継記 第10回

マスオ退職、独立を決意

  • 医業承継

2020.05.18

【前回のあらすじ】
ノリスケによるカツオ理事長解任の画策は未遂に終わり、その代わりにマスオとノリスケの理事報酬の減額が社員総会で議決されることとなった。今後はさらにスタッフ労務管理や教育を徹底する方針となり、結果的にイソノ医院は業務の生産性が向上し、スタッフの残業時間も減少。人件費を圧縮することに成功し、ようやく黒字経営を実現できた。また、労務管理を徹底することで院内の雰囲気も良くなり、スタッフは皆、楽しそうに働いている。しかし、そんなイソノ医院を横目に、マスオだけが不満を募らせていた……。

 

タラちゃんにかかる学費を考え、できれば資金が安く済むM&Aの開業にしたいと考えたマスオ。M&A開業は、患者さんやスタッフをそのまま引き継ぎ、開業後の不安定な経営を避けやすいのも利点であった。独立開業に心魅かれながらも、勤務医経験が長く安定志向のマスオにとって、M&A開業は魅力的に映った。

こうしてマスオは、本格的にナカジマ医院の買収、そして開業に向けて動き出すこととなった。カサナミが間に立って譲渡価格について交渉し、マスオはナカジマ医院の保有する設備などを見て自分の診療に合っているかどうかを確認。その結果、やはりマスオのナカジマ医院買収の意志は揺るがず、譲渡価格についてもほぼ合意する段階まで話を進めることができた。マスオのM&A開業はいよいよ現実味を帯びていく。

 

 

 

次回につづく

 

税理士笠浪真のワンポイントアドバイス

最近では、新規開業だけでなくM&Aによる開業のケースも増えています。新規開業ですと、医院建築や医療機器の購入などで多額の融資やリースが必要になります。しかし、M&A開業であれば、建物も医療機器も一通りそろっているため必要資金が抑えられ、しかも患者さんもスタッフも引き継ぐことができます。このような背景から、新規開業をハイリスク・ハイリターンの投資とするならば、M&A開業はローリスク・ローリターンの投資と言えるのです。

しかし、当然戸建て物件を建築する場合のように「好きな立地でレイアウトも自分の思いのまま」とはいきません。買収する医院が古い場合は内装を新調したり、医療機器を買い替えたりと、結局新規開業と変わらないようなケースも起こり得ます。自分がやりたい医療とのマッチングを、十分確認するようにしましょう。

また、譲渡価格は不動産や医療機器などの資産価値だけでなく、「長年にわたる患者さんの信用」という、目に見えない営業権(のれん)が加算されます。営業権については明確な指標がなく、評価が難しいため、売主と買主だけで交渉するのはほぼ不可能です。そのため、客観的な調査(デューデリジェンス)が必要になるので、M&Aに詳しい専門家を介することが必須です。医院・クリニックのM&Aについては、多数の実績がある税理士法人テラスにぜひご相談ください。

※このコラムは、2020年5月現在の情報をもとに執筆しています。

 

 

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執筆者紹介

笠浪 真

笠浪 真
(かさなみ まこと)

税理士法人テラス 税理士・MBA

京都府出身。国立滋賀大学経済学部卒業の後、同大学院にてMBA取得。在宅・特別養護老人施設にて、介護士として医療福祉の現場に携わり、会計事務所・法律事務所・コンサルティング会社を経て、税理士事務所を開業。これらの経験を、さらに医療の現場に役立てたいとの思いから、慶應義塾大学大学院医療マネジメント専攻にて、医療経営を学び直す。平成25年「医師からファーストコールされる存在」として、病院・診療所・歯科医院の会計に専門特化した税理士法人テラスを設立。経営理念に共感した医師・歯科医師より、多くの支持を得る。
税理士法人テラスのサイトはこちら

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