医院開業コラム
承継入門、最初の一歩 第6回
2024.11.05
既存の医院を引き継ぐ承継開業を検討している医師の中には、クリニックの売却(譲渡)価格について気になっている方も多いでしょう。どのような計算方法で、どのような価値に対して対価を支払うのかしっかりと理解しておくことで、提示されている売却価格が適切なのか見極めやすくなります。
そこで今回は、クリニックの売却価格の計算方法や価格決定に影響する主な要素を解説し、譲受側にとって設定された金額が妥当かを判断する方法も併せてご紹介します。
クリニックの売却価格の考え方に関する理解を深め、適切な金額での承継を目指しましょう。
クリニックの売却価格は規模や形態、科目などによって異なりますが、一般的な相場は「2,000万円~4,000万円」程度です。高額な場合は1億円を超えることもあり、かなり開きがあります。ゼロの状態からクリニックを開設する際にかかる費用や軌道に乗るまでの収益性から考慮すると、低コストといえるケースが多いですが、事業性を考慮し検討する必要があります。
では、クリニックの売却価格はどのように算出されるのか、主に用いられている3つの計算方法について押さえておきましょう。
時価純資産価額法とは「時価純資産+営業権」で売却価格を決める計算方法で、クリニックのM&Aにおいて、最も多く用いられています。具体的には、時価の資産から時価の負債を引いた金額に、営業権の価値を加算して計算します。
・クリニックまたは医院の総資産(資産-負債)+営業権(見込利益)=売却価格
【時価純資産価額法の売却価格】
なお、営業権とは一般企業における「のれん」を指し、クリニックのブランド力や認知度、人材力といった無形資産のことです。患者さんからの信望の厚さや地域での知名度の高さ、スタッフの質の高さといった要素はクリニック経営の大きなアドバンテージになるため、医業承継ではこうした無形資産が営業権として計上され、売却価格に上乗せされます。
営業権は、基本的に「院長の年間所得×1年分」の計算式で算出される事例が多いですが、直近3年間の所得状況が加味されるケースも少なくありません。また、赤字経営のクリニックの場合は営業権の価値が評価されないことが多く、場合によっては減算される可能性もあります。
2. DCF法
DCFとは「Discounted Cash Flow(ディスカウント・キャッシュ・フロー)」の略で、クリニックの将来性に重心を置いた計算方法です。具体的には、事業計画書のキャッシュフローだけでなく、将来得られる可能性がある利益も価値として換算し、そこから将来の不確定要素やリスクを差し引く形で売却価格を求めます。
評価価値に将来性が加味されるため、事業計画がしっかりしているクリニックには高値が付く傾向があります。
3. 取引事例法
取引事例法とは、過去の取引実績を参考に評価対象クリニックの売却価格を決定する方法です。事業内容や地域、財務指標などが似ているクリニックの売買事例を収集し、その売買実績に基づいて価値試算が行われます。
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