医院開業コラム
承継入門、最初の一歩 第4回
2024.03.08
クリニックの開業にあたり、新規で立ち上げる「新規開業」と、既存の医院を引き継ぐ「承継開業」のどちらを選ぶか悩む方も多いでしょう。最適な開業スタイルは、ご自身の経営理念や診療コンセプトによって異なります。そのため、両者の違いをしっかりと把握することが大切です。
そこで今回は、新規開業と承継開業のメリット・デメリットについて詳しくまとめました。さまざまな視点から両者の特徴を分析し、どちらの選択肢がご自身に適しているのか慎重に探っていきましょう。
まずは改めて、2つの開業スタイルの違いを押さえておきましょう。開業には、大きく分けて「新規開業」と「承継開業」があります。新規開業は物件探しや内装設備の手配、スタッフの採用といった多くの準備をゼロベースで行い、新たなクリニックを立ち上げる開業方法です。以前は新規開業のほうが主流でしたが、医療業界における経営難などの影響により、新規開業の件数は比較的減少傾向にあります。
一方、承継開業とは、既存のクリニックを承継して新たに経営を行う開業方法です。親子間で承継する「親族内承継」や、院内に勤務する医師が受け継ぐ「院内承継」などが一般的ですが、近年は後継者不在などの要因から、第三者による「第三者承継」も増えてきています。
新規開業と承継開業はそれぞれ特徴が異なりますが、主なメリット・デメリットは以下のとおりです。
【新規開業と承継開業のメリット・デメリット】
新規開業と承継開業のどちらのスタイルが合っているのか適切に見極めるために、これらのメリット・デメリットを深掘りしていきましょう。
新規開業には、主に下記のメリットが挙げられます。
・豊富な選択肢から開業エリア・物件を選べる
新規開業は、多くの立地・物件から希望条件に合った開業先を選定できます。例えば「生まれ育った地域で開業したい」など希望のエリアが限定される場合は、新規開業を目指すほうが望ましいでしょう。
・理想の医院設計が叶う
新規でクリニックを立ち上げる場合は、建物だけでなくインテリアや設備機器も一からそろえて開業準備を行います。理想の医院設計を反映させた自分好みの空間で医療を提供できるのは、新規開業ならではのメリットです。
・医院の理念にマッチする人材を選定できる
新規開業時には院長自身がスタッフの採用に関わるため、医院の理念にマッチする人材を集められます。また、開業準備をみんなで行うことで、新しいスタッフの間に自然と仲間意識が生まれます。良い雰囲気や高い結束力の中で開業することは、その後の経営における大きな武器になることでしょう。
新規開業には前述のようなメリットがある一方で、以下のようなデメリットがある点に注意が必要です。
・開業にかかる初期費用が大きい
新規開業においては、医療機器や家具、細かい備品に至るまであらゆる要素を一つひとつ準備しなければならないため、承継開業に比べて初期費用が高くなる傾向があります。クリニックを新築する場合は物件費用だけでなく建設費もかかり、賃貸の場合でも医院経営に適した内装工事が必要です。
その他、周知のための広告宣伝費なども考慮しなければなりません。新規開業は医院設計における自由度が高い点がメリットですが、こだわればこだわるほど莫大な資金が必要であることをしっかりと認識しておきましょう。
・事業が軌道に乗るまでに時間がかかりやすい
新規開業では診療圏調査などである程度の収支計画は立てられるものの、実際にどのくらいの集患があり、どの程度の期間で経営が安定するのかを明確に予測することは難しいです。開業後しばらくの間は経営が不安定になる可能性を見据え、長い目で黒字化を目指すことが求められます。
続いて、承継開業における主なメリットを見ていきましょう。
・開業にかかる初期費用を抑えられるケースが多い
承継開業は、基本的に既存の建物を引き継ぐことになります。そのため、不動産をはじめさまざまな初期費用を抑えられるケースが多いです。併せて医療機器や内装、インテリアなどもそのまま使用できる場合は、さらに大幅なコストカットにつながります。
また、承継開業は地域住民などから認知をすでに得ていることもメリットです。ゼロから始める新規開業と比較すると、広告費用を最小限に抑えることができます(詳しくは第2回をご覧ください)。
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