医院開業コラム
イソノ医院の承継記 第9回
2020.04.09
【前回のあらすじ】
膨れ上がる人件費などで経営赤字となったイソノ医院。経費のいざこざをきっかけに、カツオとマスオ、ノリスケの間に不穏な空気が流れ始める。ノリスケはカツオを解任してマスオを理事長にすることを画策し、これにマスオも賛同。あとはサザエの承諾を得られれば、医療法人の社員票が過半数に達することとなり、カツオを解任できる。果たして、カツオはこのまま解任されるのか? それとも……。
こうして、ノリスケが画策したカツオ理事長解任は未遂に終わった。その代わり、社員総会でマスオとノリスケの理事報酬を下げることが決議。結果として、イソノ医院の経営は何とか黒字に転じ、危機を脱することができた。また、フネの意向で、今後はもっとスタッフとのコミュニケーションや教育体制をしっかりとり、医院全体の業務における生産性の向上を目指すこととなる。しかし、危機を脱して経営改善に動き始めたイソノ医院に、不満をくすぶらせる1人の男がいた。その名はマスオ……。
次回につづく
医療法人の社員とは、一般企業でいう社員のことではなく、「医療法人の重要事項を決定する議決権を持つ人」を指します。原則として、3名以上の選任が必要です。そのため、株式会社でいえば、株主に近い立場にあります。社員総会についても、株式会社でいうところの、株主総会に近いものと考えて構いません。株主と社員の異なる点は、出資(基金)の有無や金額にかかわらず1人1個の議決権を有すること(医療法46条の3の3第1項)と、配当が禁止されている(医療法54条の1)ことです。
社員総会によって、原則3人以上の理事(医療法46条の2第1項)と、1人の理事長が選任されます。理事は株式会社でいうところの、取締役などの役員に相当します。小中規模の医療法人では「理事=社員」となっているケースが多いですが、必ずしも社員の中から理事を選ぶ必要はありません。
また、理事だけでなく、監事も1人以上選任する必要があります(医療法46条の2第1項)。監事とは、医療法人の業務や財産の状況を監査する人のことを指します。そのため、医療法人の理事、理事の親族、スタッフ、利害関係のある営利法人の役員、顧問の税理士などは就任できません。
注意すべき点は、社員総会では社員の過半数の議決によって理事長や理事、監事を解任できることです。社員の過半数を理事長の信頼できる方で固めておき、極力解任を防ぐ体制とするのが一般的です。しかし、それでも社員が何名か不満を抱くことになれば、解任もあり得ます。特に新しく社員を迎える場合は、いざこざをきっかけに対立することもあるので注意が必要です。
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