医院開業コラム
クリニック経営者のための医療ICT活用メソッド 第59回
2023.04.11
2023年1月より「電子処方箋」が開始されました。電子処方箋とは、オンライン資格確認で構築されたネットワークを用いて、現在紙で行われている処方箋の運用を電子化する仕組みです。電子処方箋の導入状況と今後の流れについて解説します。
電子処方箋は、オンライン資格確認に続く政府の“医療DX政策の第2弾”です。今年の1月26日から、全国で運用が開始されています。主な導入のメリットとして、以下の4点が挙げられています。
①医療機関・薬局をまたぎ、リアルタイムで処方・調剤情報が共有できる
②重複投薬等チェックにより、より実効性のある重複投薬等を抑制できる
③処方箋の入力作業の削減といった薬局側における事務作業の効率化
④患者さん自らが、これまでの処方・薬剤情報を一元的に閲覧できる
厚労省が2月27日に公表した『電子処方箋の導入状況等について』によると、電子処方箋のシステム改修の事前申請をした施設数は、全国で4万412施設(2/19時点)です。その内訳は、病院930施設、医科診療所1万5,580施設、歯科診療所8,754施設、薬局1万5,148施設となっています。
また、実際に運用を開始した施設は全国で684施設(2/19時点)です。その内訳は、病院6施設、医科診療所38施設、歯科診療所8施設、薬局632施設となっており、医療機関の導入は薬局に比べて大幅に進んでいないことがわかります。
厚労省は運用を開始した施設が少ない状況に対して「オンライン資格確認の導入対応等でシステムベンダの逼迫が続いていることなどから、システム改修が進んでいない」「電子署名に必要なHPKIカードが届いていない」「地域によっては、処方箋の発行者・受け手である医療機関と薬局のどちらかしか運用開始していないことから利用に結びつかない」などの声があるとしています。
HPKIカードは、医師や薬剤師など医療分野の国家資格をオンライン上で証明する電子証明書を格納したICカードです。電子処方箋を発行する際は、このカードを用いて電子署名を行う必要があります。しかし、1月末時点におけるHPKIカードの発行枚数は約4.4万枚、そのうち2022年10月から2023年1月末までの発行枚数は約1.8万枚です。
政府は電子処方箋の導入開始を控え、HPKIカードの申請数の増加に伴い、昨秋より各認証局に発行体制強化を要請しているとのことでした。しかし、上述したように、一部の事業者から「運用を開始したいがHPKIカードが手元に届いていない」といった声も出ていることから、今後は以下のような対応を進めていくとしています。
① 各認証局における発行体制の強化
② HPKI認証局とも連携した上で、システム改修等がすでに終了しておりHPKIカードがあれば運用開始が可能な施設に対して、カードを早期発行する仕組みの導入
③ カードレス署名の導入の促進
現在、電子署名の方式として、システム上で「HPKIカードを物理的に用いる方式」と「HPKIカードを物理的に用いない方式」のどちらかを選択できます。
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