医院開業コラム
クリニック経営者のための医療ICT活用メソッド 第57回
2023.02.08
クリニックにWeb予約やWeb問診、キャッシュレス決済といったデジタル化の波が押し寄せています。デジタルを日頃から使いこなしている方なら問題はありませんが、デジタルが苦手な方にとっては、その流れについていけないと感じる方もいらっしゃることでしょう。
医療界で急速にデジタル化が進み、クリニックは今、さまざまな変化が求められているのです。そのような中、医療事務(受付スタッフ)の役割は、どのように変わっていくのでしょうか。そのヒントは、システムやロボットが苦手な“愛嬌”や“柔軟性”が求められる業務にあります。
2023年1月26日から「電子処方箋」が開始され、同年4月には「オンライン資格確認」が原則義務化されます。オンライン資格確認については、駆け込みでの作業が集中している現状、半導体不足で端末が調達できないなどの理由により開始が間に合わない医療機関・薬局には、猶予措置が設けられました。
しかしながら、いずれはほとんどの医療機関に「顔認証カードリーダー」が設置され、保険証の確認や処方箋の発行などの業務が変わることになります。2024年秋には従来の保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化する計画も発表されています。
なぜ、医療の世界で急速なデジタル化が起きているのでしょうか。その背景には、わが国において少子高齢社会と人口減少社会が同時に起きていることがあります。結果的に生産人口の減少が発生し、クリニックでも採用が難しい時代がやってきました。そこで、人手不足解消のためにデジタルを活用した生産性向上が、必要不可欠になっているのです。
先に挙げたデジタル化の内容(予約、保険証の登録確認、問診、処方箋の発行、決済)は、いずれも受付スタッフが主に担当している業務です。デジタル化を進めることで、どんどん受付スタッフの業務が減少していることが分かるでしょう。
この現象は、医療以外の一般の社会で顕著に起きています。飲食業や宿泊業、小売店、企業の受付などでも自動化が進み、無人ないし少人数での対応が可能となりました。例えば、回転寿司などでは、スマホで予約を取り、席に着いたらタブレットで注文し、商品がレーンを通って各席へ届き、会計はキャッシュレスや自動精算機で行うという流れが実現しています。そのため、回転寿司ではスタッフの人をほとんど見かけなくなってきています。
クリニックでも、この仕組みに倣って効率化したいと考える経営者が当然出てきます。「このまま行くと、受付スタッフは将来的になくなるのではないか」と思われる方もいるでしょう。それは、それほど遠い未来ではないかもしれません。
デジタル化が進むと既存の職業がなくなるという現象は、過去にもよく起きています。例えば、以前は駅で駅員が切符を切っていましたが、現在では自動改札機になりました。また、自動精算機やセミセルフレジの導入が進むことで、レジ打ちという職業もなくなりつつあります。さらに、今後自動運転が一般化された場合、タクシー運転手が必要なくなると予想されているのです。同様に、受付スタッフもこのままではなくなる職業であるように感じます。
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