医院開業コラム
クリニックのためのWeb集患教室 第8回
2024.01.17
「医療機関とSNS(Social Networking Service)は相性が良くない」というイメージはありませんか?基本的にSNSは、自分の情報や意見を不特定多数の人と共有し、承認を得るために使われることが多いメディアです。患者さんからすると「医療機関の受診」は特に他人に開示したいとは思わない情報のため、医療機関ではSNSのメリットを活かす場面がないように思えます。しかし、近年は医療機関側でも集患や求人など、さまざまな形でSNSを利用するケースが増えています。
また、時代の変化とともに患者さんの検索行動が変化する中、インターネット検索でホームページや口コミ情報を参考にするだけでなく、X( 旧:Twitter)やInstagram、LINEなどで医療機関を探す人も増えてきました。そこで今回は、SNSのクリニックにおける運用のポイントをご紹介していきます。
まず、クリニックがSNSを利用する際に、集患面で得られるメリットから見ていきましょう。
メリット1:無料ですぐに利用できる
ホームページは完成するまでに2〜3カ月程度かかる場合もありますが、SNSはアカウントさえ作成すればすぐに利用できるのがメリットです。基本的に無料でコストがかからないため、気軽に始められます。
メリット2:認知度が拡大し集患が期待できる
SNSはクリニックの特徴や強みをアピールできるため、その情報を広く発信することで、問い合わせや来院患者数の増加につなげることが可能です。発信を続けていれば、これまで接点がなかった人に対してクリニックの認知度を高められるだけでなく、SNS上で患者さんからのコメントや「いいね」をもらうことで、クリニックの信頼性向上につなげることもできます。
メリット3:クリニックのブランディングができる
ホームページは基本的な情報を伝えることは可能ですが、先生やスタッフの想い、院内の雰囲気まではなかなか伝えられません。SNSの運用は、こうした部分でのクリニックのブランディングにもつながります。情報発信を通じて、クリニックの理念やスタッフの人柄を多くの人に伝えることが可能です。
メリット4:リアルタイムに告知ができる
情報の更新が手軽にできるのもSNSの特徴です。ホームページだと、外注の場合は業者に依頼したり、設定によってはパソコンを立ち上げたりする手間がかかります。SNSであれば、その日にあった出来事や診療時間の変更、急なお知らせなどの告知を、医師やスタッフがスマホでリアルタイムに投稿(更新)できます。
定期的に発信していれば、クリニックへの親近感や信頼感につながり、来院のきっかけになるかもしれません。ただし、SNS上の告知はもともとSNS上でつながりのある人に伝えるだけなので、院内外の掲示やホームページなど、他の手段も併用する必要があります。
メリット5:患者さんとのコミュニケーションツールになる
コメントや「いいね」を通じて、患者さんとダイレクトにコミュニケーションが取れるのも、SNSのメリットです。患者さんも個人でSNSのアカウントを持っている場合が多く、継続的なコミュニケーションになり得ます。しばらく通院していなくてもSNSを通じてお互いの存在を感じ合うことができ、親密感を持ってもらいやすくなります。
SNSはメリットが多い反面、デメリットもあります。運用の際は、注意点を頭に入れておくことが必要です。
デメリット1:運用に知識や時間が必要
SNSはホームページに比べて手軽に始められますが、効果的な運用を続けるには知識や時間、労力が必要です。医師やスタッフの負担になりすぎないよう、場合によっては可能な部分を業者に依頼するなどの対応も考慮しましょう。
また、運用方針をあらかじめ決めておくことも重要です。ありがちなのが、運用方針を決めず、SNSの経験のあるスタッフに任せ切りにしてしまうことです。これでは患者さんへ伝えたいことやクリニックの考え方が十分伝わらず、SNSのメリットである患者さんとのコミュニケーションやブランディングなどの実現も難しくなります。そのため、はじめにSNSを使う理由や目的を明確にしておきましょう。SNSの発信を「院内の理念共有とスタッフ育成を行う手段」と位置づけて運用を続けることが大切です。
デメリット2:継続に手間がかかる
SNSの運用には定期的な投稿が必要ですが、医師やスタッフが忙しく、時間を割くことが難しい場合もあります。すべての投稿に全力を注ぐのは現実的ではありませんので、無理のない投稿頻度やルールを決めて運用すると継続させやすいでしょう。
また、不適切な投稿をきっかけにクレームや問い合わせが増え、スタッフの負担が増えるケースも考えられます。こうした場合のルールも設け、効率的に対応ができるようにしておきましょう。
デメリット3:炎上リスクがある
SNSは投稿の内容によって、見る人に誤解を招いたり、不快感を与えてしまったりすることがあります。不適切な発言などが、意図せぬ形で拡散されてしまうケースも否定できません。運用には、見ず知らずの人たちから集中砲火を浴びる「炎上」のリスクがあることも事実です。
炎上すると、クリニックのイメージダウンにつながり、逆効果になることもあります。そのためSNS運営担当者には、ある程度の一般常識とインターネットリテラシーが求められます。対策としては、投稿内容やタイミングについて、あらかじめクリニック内でルールを決めておくといいでしょう。
デメリット4:効果が出るまでに時間がかかる
集患を目的にSNSを始めても、効果が出始めるまでには一定の投稿数が必要になるため、時間がかかります。最初は登録者(フォロワー)ゼロからスタートするので、投稿しても誰も見てくれない日もあるかもしれません。一方的な発信だけでなく、共感できるフォロワーを増やしたり、どのような投稿を出すと好反応が多いのかをチェックしたりと、地道な作業が必要になります。
そのため、患者さんにSNSの登録をお願いすることはもちろん、お役に立てる有益なコンテンツや共感される情報を発信し続けることが大切です。SNSは中長期的な視点で、丁寧に取り組んでいくことで、じわじわと効果が現れてきます。特に、運用初期はユーザーのリアクションを気にせず、練習のつもりでコツコツ投稿しましょう。
一言でSNSといっても、さまざまなサービスがあります。それぞれの特徴を知り、クリニックに合ったサービスを選択することが大切です。代表的なSNSとして、LINE、 X(旧Twitter)、Instagram、Facebookについて詳しく見ていきましょう。
LINE(ライン)公式アカウント
LINEは今やメールに替わるコミュニケーションツールで、国内最大のユーザー数を誇るSNSです。全年代で個人の利用率が高く、多くの人が使い慣れていること、投稿の開封率が高いことが特徴です。新患の獲得よりも既存の患者さんの利便性に効果を発揮し、来院のリマインドなどで囲い込みが期待できます。LINEは不特定多数の人とつながるのではなく、クリニックを受診した患者さんだけにメッセージを送るものです。個人のLINEに直接送るため、配信の頻度や時間帯に気を付けながら運用する必要があります。
また「LINE公式アカウント」は、ビジネス向けのLINEアカウントです。取得すると、友だち登録をした人(ユーザー)にメッセージを一斉送信できます。テキストだけでなく、静止画や動画、ボイスメッセージなども送ることが可能です。申請後に審査があり、1カ月程度で取得できます。発信した情報を見てもらうには、まず友だち登録をしてもらう必要がありるため、ポスターや広告などを利用して、積極的に友だち登録を促すことが重要です。
■特徴
・年齢層が幅広く、日常的に利用されている
・メールよりもメッセージの開封率が高く、情報を届けやすい
・メッセージは月200通まで無料、それ以上は有料プランの契約が必要(2023年10月時点)
・特典やキャンペーンなどに向いている
・チャットボット機能(自動的に問い合わせに対応する機能)が使用できる
・予約用のアプリとしての利用も可能
・「友だち登録」をしてもらう対策が必要
・メッセージを配信する頻度や時間帯に注意が必要
■活用例
LINEはホームページのようにアップされた情報を患者さんが個別に見に行くのではなく、クリニックを利用した患者さんにメッセージを送信して情報を届けるツールです。そのため、定期検診や乳幼児の予防接種の時期の告知などに適しています。従来、はがきや電話で定期検診の時期を知らせていたクリニックであれば、経費やマンパワーを節約できます。
また、LINEは特定の情報を一斉送信することも容易です。クリニックで発信しているコラムや健康に関連する情報を配信することで、既存の患者さんの来院を促すといった使い方も運用法のひとつです。トップ画面にはWeb予約や問診、ホームページやInstagramにアクセスできるボタンを配置できます。LINEに対応した診療予約システムと連携することで、案内から予約までLINEだけで完結できるようになり、利便性を高めることも可能です。予約が簡単に取れることから、集患も期待できます。
X(エックス)
(さらに…)
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