医院開業コラム
クリニックのためのWeb集患教室 第7回
2023.12.05
最近話題になっている「Web問診システム」をご存じでしょうか?業務の手間や患者さんの待ち時間を減らし、感染症対策の一手としても注目されているシステムですが、このほかに得られるメリットも多く、結果としてクリニックの集患におおいに役立つと考えられます。
そこで今回は、Web問診システムの導入によってどんな効果が得られるのかを具体的にお伝えするとともに、留意点についても触れたいと思います。
Web問診とは、従来であれば来院時に紙の問診票に記載したり、看護師が口頭で行ったりしていた問診を、患者さんが来院前にスマートフォンやパソコンからWeb上で記入し、クリニックに送信するシステムです。事前に記入がない場合でも、来院時に患者さんご自身のスマートフォンやクリニックのタブレットで記入してもらうことも可能です。
まず、導入することによって、どのようなメリットが得られるのかを整理してみましょう。
メリット1:患者さんの院内滞在時間の減少・待合室の混雑緩和
“患者さんの待ち時間”はクリニックの課題のひとつといえるでしょう。また、場合によっては、待合室が患者さんであふれてしまうことも想定されます。このような状況に、お悩みの方も多いのではないでしょうか。
Web問診では、患者さんがクリニックに到着してから問診票を記入する必要がありません。問診票を書くために予約時間より早く来院することなく、院内での記入時間も不要です。スタッフや医師の業務効率も向上するため、結果的に患者さんの院内滞在時間が減り、「待ち時間が短かった」という満足感を得られることにつながります。同時に、待合室の混雑緩和が期待でき、院内感染リスクの抑制にもつながるのです。
メリット2:自宅で記入するため落ち着いて対応できる
お子さま連れでバタバタしている方や、忙しいビジネスマンの方などは、余裕があるタイミングで問診を済ませることが可能です。例えば、小さなお子さまをきょうだいで受診させたいとき、お子さまたちの面倒を見ながら人数分の紙の問診を記入することは負担になりますが、自宅であれば落ち着いて対応できます。また、付き添いのお父さまが、お子さまの症状や経過の詳細までよく把握していないというケースもあるでしょう。お母さまがWeb問診で、ある程度詳細を記載しておけば、情報不足をカバーできます。
メリット1:受付業務の効率改善
従来の紙の問診票は、やはり受付スタッフに大きな負担がかかります。なかでも、問診票をカルテに転記する作業は「手書きで何が書いてあるかよく分からない」「必要な箇所が書かれていない」など、作業に時間がかかってしまう場合もあります。
Web問診なら、患者さんが事前に問診票を入力していることで、これまで紙の問診で行ってきた業務がスマートフォンやタブレットに置き換わります。情報がデジタル化され、面倒だった電子カルテへの転記作業が不要になるため、事務作業が劇的に軽減されます。院内の業務フローが改善されるだけでなく、スタッフの作業内容自体が軽減されることで離職率の低下にもつながるのはメリットです。
メリット2:診察の効率化
紙の問診票の場合、その内容を受付や診察室でヒアリングして、転記しているケースがありますが、転記作業とヒアリングがなくなるため、診察の効率化につながります。また、紙の問診票の場合は質問が多くなるほど枚数が増えてコストがかさみ、回答する患者さんにとってもストレスです。
Web問診の場合、あらかじめ項目をカスタマイズしておけばスマートに対応できます。例えば、ドリルダウン型の質問を設定することで「この答えをした人にはこの質問」といった形で深堀りも可能です。問診内容を事前に練っておくことで、医師は診察をスムーズに進められ、より多くの患者さんを診られるようになります。
メリット3:感染症の拡大予防に有効
Web問診は、新型コロナウイルスの感染拡大防止にも有効です。導入によって患者さんの待合室での滞在時間が減少し、またペンや記入用バインダー等に触れることなく問診が完了できるため、感染防止対策になります。事前にWeb問診で「海外渡航歴」や「症状」などを確認しておくことで、他の患者さんと接触の少ない時間帯に来院していただくなどの対策も可能です。
メリット4:資源削減
Web問診の場合、当然ながら紙の問診票に記入する必要がありません。問診票の紙、筆記用具、印刷代などが不要になるため、資源の削減につながります。
メリット5:経営・マーケティングへの活用
問診票に「何を見て来院されましたか?」といった質問項目を入れている医療機関も多いと思います。この回答は広告などを検討する上で貴重な情報となりますが、手書きの問診票で、きちんと集計しているケースは少ないのではないでしょうか。Web問診ではそれらのデータが自動的に集まり、集積された情報は経営やマーケティングに活用できます。
このように、Web問診は患者さん、クリニック双方にとってメリットの多いサービスです。ただし、一方で導入にあたって留意しなければならない事項もあります。
この記事をシェアする