医院開業コラム
開業風林火山 開業サポート衆が語る12の鉄則 第10回
2023.06.27
数多のクリニックの開業をサポートしてきたアイセイ薬局のコンサルタントに、クリニックづくりのノウハウを学ぶ『開業風林火山』シリーズ。第10回となる今回は、スタッフの採用と研修をテーマに取り上げます。
ベテランコンサルタントの高坂は「人の採用は、数あるステップの中で最も重要であるといっても過言ではない」と話します。いい人材を集め、そして育てるには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
【プロフィール】
高坂 博之(こうさか ひろゆき)
約25年間で500軒を超えるクリニックの開業を支援してきたベテランコンサルタント。内科から皮膚科、整形外科、小児科や脳外科まで、あらゆる科目のクリニックのコンサルティング経験を持つ。また、税務や法律、採用など知識の幅が広く、さまざまな角度から開業・経営をサポートしている。
――初めに、人材募集の方法について教えてください。
近年の人材募集の方法として主流なのは、広告代理店が提供する求人雑誌やWeb求人媒体です。この方法が、最も多くの求職者に情報を発信できるでしょう。次いで多いのは、折込チラシの配布ですね。最近は新聞をとっていない世帯が増えているものの、狙ったエリアにアプローチできること、そして住民の方々にクリニックの開業をお知らせできることが大きなメリットです。
基本的に、クリニックでは採用と内覧会の開催以外のタイミングで広告を出すのが難しいため、求人チラシが開業の宣伝の意味を併せ持つことは、ぜひ知っておいてください。上記以外だと、現在の勤務先の知り合いに声をかけたり、エリアによっては電柱広告を出したりという選択肢もあります。
――人材募集はいつ頃から着手すればいいでしょうか?
開業の3〜4カ月前には着手し、研修を始める時期にあたる開業2週間前までには人員がそろっているようにしてください。開始時期が少し早いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、募集する時期やエリアによっては、1回の募集ではいい人材を採用できないこともあります。「募集→書類選考→面接」のフローを2回行う可能性を想定すると、この頃には着手しないと間に合いません。
なお、予想よりも人が集まらない事態は、看護師だけではなく受付の募集でも起こり得ます。少し前までは「受付はそれほど採用に困らない」と考えられていましたが、近年は一般企業も人手不足が深刻で、以前よりも待遇を充実させて受付の募集をかけているところが多いです。競合が増えていることを、念頭に置いておきましょう。
――選考はどのような流れで進めるのでしょうか?
まず、開業の3〜4カ月前に依頼する広告代理店を決め、募集にあたっての条件(待遇など)を決めていきます。その後、媒体に求人情報を掲載して募集をかけ、書類選考と面接を行い、採用者を決めるという流れです。
このように説明するとシンプルなステップだと感じられるかもしれませんが、実は面倒な雑務がたくさんあります。面接を行う求職者との日時調整や、それに合わせた面接会場の確保だけでも一苦労ですし、履歴書の管理(保管と破棄、要望があれば返送することも)などデリケートな業務も発生するでしょう。
こうした煩雑な業務をドクター本人が行うのは大変なので、広告代理店に任せることをおすすめします。広告代理店を選定する際は、上記の業務を任せられるか、求職者からの問い合わせ窓口を担ってくれるか(ドクターの連絡先を公表してしまうと、業者からセールスの連絡が入るリスクが高いです)など、サービスの範囲を確認しておいてください。
それから、広告代理店を探すタイミングで、社会保険労務士と契約することをおすすめします。顧問契約まではいかなくても、就業規則の整備をはじめとした労務関連の整備や面接を手伝ってもらえるようにしておくと安心です。最近の採用事情としては、労働力が不足している「売り手市場」で、就業環境がきちんと整備されていないと候補からすぐに外されてしまいます。反対に、社会保険を完備して就業規則を定め、さらにきちんと社会保険労務士と契約していれば、魅力度はぐっと高まるでしょう。
また、社会保険労務士に面接に同席してもらえば、雇用条件に関する踏み込んだ質問があった場合も安心です。ドクターでは即答できない内容には社会保険労務士が答えてくれるので、自身の負担を軽減しつつ、求職者の印象を損なわずに済みます。
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