医院開業コラム
開業風林火山 開業サポート衆が語る12の鉄則 第8回
2023.04.04
クリニックの開業に必要なステップを、全12回にわたり紹介するシリーズ『開業風林火山』。アイセイ薬局の開業コンサルタントが、実際の流れに沿い、さまざまなノウハウを解説していきます。
第8回のテーマは「融資申込事業計画書の作成と金融機関・リース会社選び、そして審査をクリアする方法」です。開業に必要な多額の資金をどのように調達するか、山場ともいえるステップでしょう。今回解説するのは、前職のリース会社で審査も数多く担当してきた、ベテランコンサルタントの高坂です。
【プロフィール】
高坂 博之(こうさか ひろゆき)
約25年間で500軒を超えるクリニックの開業を支援してきたベテランコンサルタント。内科から皮膚科、整形外科、小児科や脳外科まで、あらゆる科目のクリニックのコンサルティング経験を持つ。また、税務や法律、採用など知識の幅が広く、さまざまな角度から開業・経営をサポートしている。
――「融資申込事業計画書」とはどのようなものか教えてください。
融資申込事業計画書は名前の通り、開業資金を調達するため、つまり融資やリースを申し込むために使われる計画書です。第5回でご紹介した概算事業計画書より、もっと具体的につくるもので、内装や機器の費用など可能な限りすべての項目で見積もりをとって、金額を反映します。
また、経費関係もできるだけリアルに近い数字を算出します。例えば人件費は、ハローワークなどで開業エリアの看護師の給与平均を調べれば、予測が立てられるでしょう。
なお、融資申込事業計画書の作成は、我々のようなコンサルティング会社や税理士事務所、機械などの卸売業者などに依頼できます。フォーマットはインターネット上にあるので、自身でつくることも可能です。
――開業資金の調達方法にはどのような選択肢がありますか?
代表的な調達手段は、金融機関から融資を受けるか、リース会社を利用するかでしょう。設備資金は融資を受けて資金を調達することが必要ですが、機器の導入についてはリースも選択できます。なお、融資(を受けての購入)とリース、それぞれのメリット・デメリットは第7回にまとめているので、ぜひそちらも併せてご確認ください。
それから、民間の金融機関をメインにし、公的金融機関である「日本政策金融公庫」から融資を受けたり、自治体からの助成金を利用したりといった手段もあります。ただ、日本政策金融公庫は民間の金融機関に比べて融資額の上限額が低く、近年は金利の差もあまり大きくありません。
さらに、日本政策金融公庫は審査期間に時間を有することがあるので、スケジュールにゆとりがあることが条件ということもあり、利用しないケースが増えています。基本的には民間の金融機関で資金調達し、日本政策金融公庫で予備の運転資金を少額借りることが稀にあるくらいでしょうか。
また、自治体からの助成金も、条件が厳しかったり手続きが面倒だったりする割に、金額があまり大きくありません。活用できるか検討してみることはもちろん悪いことではありませんが、あまり期待はしないほうがいいでしょう。
――金融機関、リース会社の選定にあたって気をつけるポイントはありますか?
医療分野に強い、特にクリニックの新規開業を数多くサポートしている会社を選ぶといいでしょう。世の中には金融機関もリース会社もたくさんありますが、実はクリニックの開業を支援している会社は限られているのです。
選定にあたっては、コンサルタントや税理士などの専門職から情報を得るのがおすすめです。「この開業条件なら、大体いくら貸してくれるだろう」などといった、そのときのトレンドも一緒につかめると思います。あとは、先に開業した先輩に聞いてみる手もありますね。
――融資やリースを申し込む際、審査ではどのようなことが重視されるのでしょうか?
これはクリニックの開業に限ったことではありませんが、やはり計画の妥当性ですね。開業資金の金額は適正か、事業として成り立つか、返済に問題がないかといったことです。
(さらに…)
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