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開業風林火山 開業サポート衆が語る12の鉄則

開業風林火山 開業サポート衆が語る12の鉄則 第6回

第6回 成功のカギは“具体的な未来図”。大幅コストアップの落とし穴も潜む内装設計・施工のポイント

  • 医院開業のポイント

2023.02.07

アイセイの開業コンサルタントに、クリニック開業に必要な知識やノウハウを学ぶシリーズ『開業風林火山』。全12回の折り返しとなる今回は、内装設計・施工の流れと、そのポイントについてご紹介します。

クリニック開業における代表的な投資のひとつである「内装」。失敗しないために、またコストをできるだけ抑えるために、プロはどのようなことを意識しているのでしょうか。第5回に引き続き、500件超の開業支援実績を持つ高坂氏と、業界を問わず多数の内装を手掛けてきた荒木氏が解説します。

 

【プロフィール】高坂 博之(こうさか ひろゆき)
約25年間で500軒を超えるクリニックの開業を支援してきたベテランコンサルタント。内科から皮膚科、整形外科、小児科や脳外科まで、あらゆる科目のクリニックのコンサルティング経験を持つ。また、税務や法律、採用など知識の幅が広く、さまざまな角度から開業・経営をサポートしている。

 

【プロフィール】荒木 英明(あらき ひであき)
内装の設計、施工を手掛ける会社での勤務を経て、クリニック開業コンサルタントに転身。業界を問わず、多数のクライアントに“ベストな内装”を提案してきた経験を活かし、医師一人ひとりの想いやコンセプトを形にするサポートをしている。物件開発の知見も豊富で、医療モール開発においても手腕を発揮。

 

内装を考えるポイントは、提供したい医療サービスを具体的に想像すること

――クリニックの内装設計はどのような流れで決めていくのでしょうか?また、検討にあたってポイントがあれば教えてください。

荒木:クリニックの内装を決めるにあたり、最優先すべきポイントが「ゾーニング」です。私はこれまでさまざまな業界のクライアントの内装設計に携わってきましたが、ここがクリニックづくりならではのポイントですね。ゾーニングが確定すれば、設計全体の7〜8割が完了したといっても過言ではないでしょう。
ゾーニングを考えるにあたっては、まず診療スタイルを軸にします。わかりやすい例を挙げると、小児科なら診察室を個室にし、部屋数を多めに設ける。整形外科なら、機材との兼ね合いでレントゲン室を広く確保する。採尿・採便の検査を扱う場合は、トイレの数を増やす……といった具合です。

高坂:それからコンセプト、どのようなクリニックにしたいかという想いも反映させたいですね。昨今のコロナ禍では、患者さんに安心感を提供したいという考えから、発熱している方とそうでない方の動線を完全に分けて、同じ空間で過ごすことがないようにしているクリニックが多く見られます。あとは、待合室の席数などを来患数の見込みに合わせて決めていきます。

荒木:ゾーニングに続いて、より細かくレイアウトを検討します。ここでポイントになるのは、スタッフや患者さんの動線。特にオペレーションを具体的に想像し、その流れがスムーズかどうかをよく考えることが重要です。
以前、患者さんのプライバシー保護の観点から、診察室を完全個室にしたいという先生がいました。「お気持ちはわかるのですが、予算も高くなりますし、バックヤード側にも壁をつくってしまうとカルテの受け渡しなどが大変になりますよ」と進言したのですが、結果的には先生のご希望どおりにすることに。しかし、いざ診療がスタートすると、やはりドアは常に開けっ放しで、カーテンをかけていました。動線以外では、医療機器の設置スペースの寸法にも気を付けたいですね。導入できる機材が限定されかねませんから。

高坂:レイアウトについては、可能であれば家族など第三者から意見をもらうのがおすすめです。特に男性の場合は、女性からアドバイスをもらうと気づきが多いですよ。実際に「妻から意見をもらった」「現在の勤務先の女性看護師に相談した」という医師は多いです。

荒木:内装のイメージがざっくり固まったら、複数の設計業者に平面図の作成を依頼します。平面図は同じ条件を提示しても設計者によってまったく違うものが出てくるので、比較して依頼先を選びます。その後の流れを大まかに説明すると、まず医療機器の会社にも入ってもらって、平面図を確定します。続いて立面や空調、防災設備をプロットし、紙面での設計は完了です。

高坂:この過程の中で、随時費用の調整をしていきます。限りある予算の中で、何を優先して何を妥協するか……悩みどころですね。なお、レイアウトが決まって工事のボリュームがある程度見えてきたら、その段階で内装工事費用の概算見積書をもらっておくのがベスト。予算を作成しやすいですし、その後のステップ(会計士による事業計画の作成)がスムーズになります。

荒木:紙面での設計が完了したら、最後は“墨出し”です。墨出しとは、設計図を実際のテナントの床や壁に描いていくステップ。墨出しにOKを出すと施工が始まり、その後は調整ができなくなるので、この段階で実際に現場に行き、自分の目で確認してください。

 

内装設計の段階で数千万円のコストアップが起こるリスクも!?

――内装設計のステップで起こるトラブルには、どのようなものがありますか?

荒木:開業形態により、大きく分けて“戸建て”と“テナント”とで、それぞれ異なります。まずテナントについては、医療サービスを提供する空間であることを想定してつくられたものでない場合、排水や電気の設備といったインフラの整備が必要になることがあります。この工事には、かなりの費用がかかることが多いです。

高坂:特に工事区分が“B工事”(詳しくは下記線内を参照)になると、工事の条件や施工業者はオーナーの指定に従わなければならないので、それだけで数千万円に上ることもザラにあります。

荒木:一方、戸建ての場合は、特に地方だとインフラが整っていないケースがあります。下水管が届いていなくて、300mも引っ張ってこなければならず、莫大な工事費用が必要になったなどという話も耳にしますね。

高坂:あらかじめトラブルリスクを認識しておき、物件選びの段階から内装をある程度イメージしておくこと、費用のかかる工事ができるだけ発生しないように設計できないか業者とよく考えることが、こうした事態を回避するコツです。


■3種の工事区分とその違い

工事には「A工事」「B工事」「C工事」の3種の区分があり、それぞれに費用負担者と施工業者の選定者、工事後の資産区分が入居者とオーナーのどちらになるかが決められています。

A工事は費用負担も施工業者の指定もオーナーが行い、オーナーの資産になるものです。ビルの外装や共用の設備、例えばエレベーターなどがこれにあたります。また、C工事は入居者が選んだ業者を使って工事を行います。自ら費用を負担し、工事後も入居者の資産になるものです。内装工事の大部分がC工事に分類されます。

問題はB工事で、オーナーが指定した業者を使い、入居者が費用を負担して工事を行います。また、資産区分はオーナーに属します。B工事はテナントの専有部分の工事でありながら建物全体に影響を及ぼすようなもの、例えばインフラや防災設備などが挙げられ、特にクリニック開業においては関係が深い区分といえます。


「安心感」と「低コスト」を両立する方法とは

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