医院開業コラム
クリニック経営者のための医療ICT活用メソッド 第50回
2022.07.19
長引くコロナ禍は、患者心理に大きな変化をもたらしています。そのひとつが、クリニックで新型コロナに感染するかもしれないという不安がもたらした「待ち時間」への嫌悪感です。そこで、今回は「待たせない」クリニックづくりの秘訣を解説します。
コロナ禍で、クリニックは徹底した「感染対策」を余儀なくされました。入り口に手指消毒の機器を設置し、体温測定を行い、待合室でも密を避けるために席を離して設置することが必要です。新型コロナが収束しても、しばらくその状況は続くと考えられます。
また、患者さんの密を回避するために改善が必要となったのが「待ち時間」です。そもそも「待ち時間」は地域にクリニックの存在が認められた証であり、患者さんが増えるにつれて、当然のごとく長くなっていきます。
これを放置すると、患者さんの満足度が下がり、スタッフも疲弊してしまいます。さらに、長引くコロナ禍は、患者さんに対して大きな「感染への不安」を植え付け、待合室で待てないという患者心理が増幅されたといえるでしょう。今まさにクリニックは、早急に「患者さんを待たせない」ことに取り組む必要が出てきているのです。
それでは、なぜ「患者さんの待ち時間」が発生するのでしょうか。その原因には「患者集中」と「患者さん1人あたりの滞在時間の延長」が考えられます。患者さんが集中する時間帯は「朝の受付開始直後」「昼休み前後」そして「診察終了間際」の3つです。患者さんが集中して来院する心理は、その立場で考えれば明らかでしょう。
また、患者さんは調子が悪いからクリニックを受診するわけで、なるべく早く診てほしいと我先に行動し、それが患者集中という結果として現れるのです。一方「患者さん1人あたりの滞在時間の延長」は、一連の診察業務の中で少しずつ発生する時間のロスが積み重なり、その結果、滞在時間が延長するという現象です。
これは業務効率に影響する問題であり、効率化が図れている場合と図れていない場合で、大きく差が出る部分でもあります。そのため、「現在の業務の中で非効率な部分はないか」を考えることが必要です。次に、それぞれの解決方法を見ていきましょう。
まず、患者集中を緩和するためには、患者集中が起きないよう患者さんに「告知」することが有効です。例えば「順番管理システム」を導入し、院外からWEBサイトを経由して「混雑状況」をアナウンスする方法があります。このシステムを導入することで、クリニックに直接行って確認したり、電話で問い合わせしたりしなくても、外から患者さん自身が混雑状況を把握できるようになります。来院する前に予約状況や待ち状況を確認することで、患者さん自らが自然と混雑を避けるような行動が促されるのです。
現在、患者集中の緩和のためのシステムとしては、一般的に①順番管理②時間予約③時間帯予約という3つのシステムが導入されています。これら3つのシステムの特性を十分に理解し、どれが自院に合うかを考えて導入を行うことが必要です。いずれにしても、患者さんの来院時間については、システムを導入することで一定の緩和効果が期待できます(参考:第29回『診療予約システム別に見る特性と選定ポイント』)。
しかしながら、待ち時間の減少は、さらに患者さんが増えて混雑する原因にもなり得ます。これらのシステムを導入しても、患者さんの集中を分散しているだけで、待ち時間の根本的解決にはなりません。患者さんを多く診るためには、診療のスピードアップを考える必要があるのです。
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