医院開業コラム
クリニック経営者のための医療ICT活用メソッド 第29回
2020.10.15
コロナ禍における感染対策として、診療予約システムに注目が集まっています。そこで今回は、診療予約システムの種類や特性、選定のポイントを解説します。
長引く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響から、感染症対策の重要性が増しています。感染リスクをできるだけ抑えながら診療所経営を継続していくためには、どうすればよいのでしょうか。
緊急事態宣言の解除に伴い、政府によって「新しい生活様式」が提示されました。これを医療機関の受療行動に当てはめることで、医療機関への影響が見えてきます。新しい生活様式では感染対策を引き続き徹底し、できるだけ不要不急の外出を控えること、3密を避けることなどが求められています。
この「不要不急の外出を控え、3密を避ける」という行動は、患者さんの「医療機関に行くのを避けたい」というマインドを作り出しました。このマインドが、ギリギリまで医療機関の受診を先延ばしするという「新しい受療行動」につながっているのです。その結果、外来受診の自粛が医療機関の患者数減につながり、医業収益の減少をもたらしているという報告がされています。
このような“外来減少時代”において、診療所は「安心して受診できる環境づくり」を徹底的に行う必要があるでしょう。
そもそも、診療所の待合室は、混んでいれば混んでいるほど「密集」「密閉」につながりやすい場所です。従って、多くの患者さんが持っているであろう「待ち時間が長い」「混雑している」という、これまでの待合室のイメージを抜本的に見直す必要があります。
そのひとつの方法として、クリニックの「滞在時間の短縮」に注目が集まっています。具体的には、診療予約システムなどを活用して「待たない・混まない」待合室を作り出す必要があるのです。
診療予約システムは、「時間予約システム」と「順番管理システム」の大きく2つに分類できます。時間予約システムとは、「時間」を軸に患者さんの予約を取っていく方法です。一方、順番管理システムは、「順番」を軸に患者さんの整理券を発行していく方法です。この2つを総称して、「診療予約システム」と呼びます。
最初に診療所で利用されたのは、「時間予約」でした。このシステムは、時間で来院患者を管理する仕組みです。事前に患者さんと「受診時間」を約束するものであり、時間がずれてしまうと患者さんの不満につながります。そのため、患者さんの診療時間にばらつきがあると、時間が押して時間を守れないという結果になってしまうのです。このことから、時間予約システムは、ある程度時間が読める診療科に限られていました。
そこで、次に出てきたのが「順番管理」です。これは、患者さんが順に「番号」を取っていくことで管理するシステムになります。あくまで順番であり、時間を予約したわけではありませんから、時間のズレによる患者さんの不満はありません。そのため、主に時間のズレが予想される診療科で採用されることになりました。
しかしながら、今度は患者さんが「順番通りに来ない」というジレンマが生まれたのです。番号さえ取っておけば優先的に診てもらえると考えた患者さんは、「順番を押さえておけばよい」という発想に至ります。このような患者さんが増加し、「早い順番を持っている患者さんがなぜか遅い順番に来院する」というケースが問題になっていったのです。
そこで時間と順番の折衷案として、最近では「時間帯予約」という方法がとられています。時間帯予約は、30分~1時間というざっくりとした時間を予約する方法です。時間内であればいつ来てもよいので、かなり融通の利く仕組みになっています。
診療予約システムの種類ごとに、仕組み、メリット、課題、導入に向く診療科を以下にまとめました。ご参考になさってください。 (さらに…)
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