医院開業コラム
クリニック経営者のための医療ICT活用メソッド 第60回
2023.05.12
クリニックにおいて、デジタルツールの活用が一般的になってきました。デジタルツールの活用は、電子カルテ・レセコン、検査画像ファイリングといった基幹システムから、Web予約、Web問診といったマーケティングツール、セルフレジ、キャッシュレスといった業務効率化ツールと、範囲を次々に拡大しています。
これから流行るデジタルツールを予測するには、政府の医療DX施策を踏まえることが必要です。政府が考える医療DX施策の前提条件は電子カルテの普及率100%であり、そのためにも電子カルテはもっと簡単に利用できなければなりません。
かつてクリニックにおけるデジタルツールの3種の神器といえば「電子カルテ・レセコン・検査画像ファイリング」でした。しかし、今では「Web予約・Web問診・キャッシュレス」が“新3種の神器”となりつつあります。多くのクリニックが、電子カルテにさまざまなシステムをつなげて、業務効率化を図ろうとしているのです。
私のような職業をしていると、よく「次に流行るデジタルツールは何ですか」という質問をいただきます。流行を先取りするのは非常に難しく、頭を悩ませる問いです。私は毎年、年末になると、クリニックのデジタルトレンドのセミナーにゲストとして呼ばれます。ありがたいことに多くの方に視聴いただき、皆さんが知りたいテーマであると実感しています。
最新のデジタルツールを導入したいと考えるクリニック経営者にとって、いち早く情報をキャッチしたいのでしょう。このデジタルトレンドの会で予測したものについて1年後に反省会を行うのですが、正直なところ、残念ながら当たるも八卦、外れるも八卦というのが実情です。
私がデジタルトレンドを考えるときに常に念頭に置いているのが、政府の医療DX政策です。4月13日、自民党が「『医療DX令和ビジョン2030』の実現に向けて」という提言書を公表しました。例年の傾向でいえば、この内容をもとに『骨太の方針2023』が策定されることから、非常に重要であると考えます。
内容としては「全国医療情報プラットフォーム」「電子カルテ情報の標準化」「診療報酬改定DX」が大きく3つの柱とされています。現在進められている「オンライン資格確認」や「電子処方箋」の延長線上にある、デジタルツールによる社会変革が描かれているのです。
政府は将来的に、全国で誰もがさまざまな医療情報を簡単に共有でき、活用できる社会を目指しています。施策を実現するためには、オンライン資格確認や電子処方箋の普及はもちろんのこと、カギを握る電子カルテの普及が重要になります。つまり、現在約5割といわれる電子カルテの普及率の向上なしでは、その先にあるさまざまな施策が成り立たないと考えられているのです。
クリニック向けの電子カルテが生まれたのは、2000年頃です。それ以前にも電子カルテのようなものはありましたが、まだ法的にカルテの電子保存が認められていなかったため「診療支援システム」と呼ばれていました。1999年にカルテの電子保存を認める通知によって、初めて「電子カルテ」という言葉が一般的に使われるようになったのです。
それから23年が経った現在、やっと普及が5割を超えました。政府は電子カルテの普及を加速させ、2030年までに電子カルテの導入率100%を実現したいと考えており、今後はそのための施策が出てくることが予想されるでしょう。
政府によるデジタル化の進め方には、一定の法則があります。
(さらに…)
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