医院開業コラム
クリニック経営者のための医療ICT活用メソッド 第17回
2019.10.17
患者さんが増加するにつれ、待ち時間が増えてしまいます。これは果たして、やむを得ないことなのでしょうか。いまより診療をスピードアップできれば、時間あたりに診られる患者さんの数は増加し、それに伴って待ち時間は減少するのです。今回は、診療のスピードアップの方法について解説します。
診療といえば、診察、検査、処置などがイメージされますが、それ自体を早くすることは、あまり効果がありません。むしろ、短くすればするほど、患者さんの満足度は下がってしまいます。それよりも、これらの「つなぎ」の部分に注目してほしいのです。効果的にスピードアップを図る秘訣は、診察前の「問診」や「予診」にあります。
通常、患者さんが来院した際に、どのような症状で受診されたのかをあらかじめ知るために、問診票の記載をお願いしています。問診票の記載は「初診時だけ」という場合と「再診時」にもお願いしているというクリニックがあります。再診時に行うことで、前回とは別の症状で受診した場合に対応できますし、「予診」として別に看護師などが口頭で行っている場合もあるでしょう。これらの行為は、いずれも事前に患者さんのニーズを集め、適切な診察準備を行うためです。
例えば、耳鼻咽喉科であれば、耳、鼻、喉の症状で来られますが、耳であれば聴力検査が必要になる可能性が高いです。聴力検査室は診療所では大抵1つしかありませんから、検査が集中すれば、待ち時間の増加につながります。しかし、事前に検査順番を把握しておくことで、検査待ちを緩和することが可能です。また、喉に違和感があれば、ファイバーで確認する可能性もあるので、ファイバーの準備も必要になります。
問診や予診から今日は診察だけなのか、検査も必要になるのかを事前に全スタッフが理解し、先回りをして準備しておくことが、スピードアップの秘訣なのです。
問診した内容を即座に行動に移すためには、問診票の内容の理解、そして情報共有が必要です。これは受付および看護師など部門間で協力して行う業務のため、定期的に疾患に関する勉強会を院内で開き、問診スキルや診療の流れを理解する活動を行っておくことが大切です。これを行うことで、全スタッフが問診に書かれた患者さんのニーズをスムーズに把握でき、共通イメージを持って事前準備を進められるようになります。
また、情報を部門間で共有するためには、電子カルテのメモ欄に記載したり、インカムで情報を流したりすることで、スムーズに情報伝達が行えるようになります。
医師が診療の合間に電子カルテに入力をする場合、この時間が案外、診療時間の延長につながっています。また、時間がないために、どんどん記載が少なくなってしまうこともあるでしょう。カルテの記載が減少することは、次回の診察へのつなぎという面でも良くなく、また監査などの際に、記載が少ないと指摘されてしまうかもしれません。
カルテは、やはりしっかり書きたいものです。電子カルテの入力に時間が取られたり、負担に感じたりしているならば、電子カルテの代行入力を行う「クラーク」の導入をお勧めします。クラークの育成には少し時間がかかりますが、育成ができれば、医師の負担軽減に大きく寄与できます。優れたクラークを配置している医療機関は、医師とクラークの連携により、診察が早くなることは間違いありません。
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