アイセイ薬局のベテラン開業コンサルタントたちが、クリニック開業におけるさまざまなノウハウを解説するシリーズ『開業風林火山』。開業までには数多くのハードルを越えなければならず、そのすべてを医師が独力でクリアしていくのは、まさに「至難の業」といえます。

第11回となる今回は、書類の届出や保険の加入など、開業直前に必ずやっておくべき準備についてお伝えします。担当するのは、500件超の開業支援実績を持ち、医療機器リース業に長年従事してきたコンサルタントの高坂と、医薬品卸会社でクリニックの診療環境づくりをサポートしてきた井上の2名です。

【プロフィール】高坂 博之（こうさか ひろゆき）
約25年間で500軒を超えるクリニックの開業を支援してきたベテランコンサルタント。内科から皮膚科、整形外科、小児科や脳外科まで、あらゆる科目のクリニックのコンサルティング経験を持つ。また、税務や法律、採用など知識の幅が広く、さまざまな角度から開業・経営をサポートしている。

【プロフィール】
井上 一登（いのうえ かずと）
医薬品卸業を営む会社の営業職を経て、2020年にアイセイ薬局へコンサルタントとして入社。多数のクリニックのより良い診療環境づくりに携わる中で培った視点や知識を生かし、医師の意向を尊重しつつも、臆せず的確なアドバイスを送るコンサルティングのスタイルが高く評価されている。

研修や内覧会準備だけでなく、開業後を見据えた関係づくりにも取り組んで

――開業直前のタイミングではどのような準備をすべきでしょうか？

高坂：まずは、開業後を見据えた研修です。接遇や電子カルテをはじめとした各種医療機器の使い方などを、外部講師やメーカー担当者を招いて、スタッフに指導してもらいます。研修をひと通り終えたら、模擬診療も行いましょう。患者さんをお迎えしてから見送るまでの一連の流れを実践し、オペレーションや動線を細かく確認していきます。研修や模擬診療については第10回で詳しくお話ししているので、ぜひそちらも併せてご覧ください。

井上：それから内覧会に向けた準備も、この頃から進める必要があります。日程を決め、また内覧会でどのようなことをするか計画を立て、それに基づいてチラシも準備してください。内覧会の内容や告知方法を考える際のノウハウは、次回（第12回）で細かく触れます。

高坂：あとは、医師会や近隣のクリニックへのご挨拶も、きちんとしておくことを推奨します。医師会については、まず開業の3カ月ほど前に連絡を入れ、年会費の支払いなど必要な手続きの確認をしましょう（この確認はコンサルタントに任せることもできますが、地域によっては医師本人でないと問い合わせを受けてもらえない場合もあります）。その後、ご自身が直接出向いて挨拶を済ませてください。

井上：近隣のクリニックへのご挨拶については、医師会やコンサルタントに伺うべき先を聞いてみるといいでしょう。地域のクリニックをよく知る医薬品卸や、医療機器商社の担当者にアドバイスをもらうのもおすすめです。

高坂：「近隣のクリニックへのご挨拶って必要なの？」と思われる方もいるかもしれませんが、開業後のことを見据えると、ぜひやっていただきたいですね。連携をスムーズにするだけでなく、ターゲットとなる患者層が似ている科目のクリニックへのご挨拶は集患につながる可能性もあります。余力があれば、訪問看護ステーションをはじめ、クリニック以外の施設へのご挨拶もしておけるとベストです。

届出を漏れなくクリアするカギは“早めのアクションと専門家との連携”

――開業にあたっては、各所に対してさまざまな書類の提出が必要かと思いますが、具体的にはどのようなものがありますか？

高坂：基本的な届出内容と届出先は、以下のとおりです。もちろん、科目や診療水準によってこの限りではないので、あくまでベースと捉えてください。

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