医院開業コラム
クリニック経営者のための医療ICT活用メソッド 第53回
2022.10.14
クリニック経営において「経営分析システム」は航海を行う上での“羅針盤”。つまり、日々の荒波の中で、効率的にゴールにたどり着くための目安となるものです。長引くコロナ禍でクリニック経営がますます難しくなる昨今、右肩上がりで患者さんが増え、診療報酬の改定率が上昇する時代はすでに終わっています。
しかし、経営分析システムを活用すれば、将来を見越した戦略を立て、実行することができるのです。そこで今回は、最近注目を集めている経営分析システムの活用法について、お伝えしていきます。
クリニック経営では、売上(医業収益)を「患者数」と「患者単価」を掛けた値で表します。一方、経費は「人件費」「外注費」「薬剤・材料費」「家賃・光熱費」などの合計で表します。売上から経費を除いたものが利益となるため「いかに売上を最大化し、経費を最小化するか」を考えるのがクリニック経営の基本といえるでしょう。
経営分析システムは、レセプト(診療報酬明細書)データを分析するものが主流です。このシステムを活用することは、売上の各要素を分解し、売上を最大化させるための要因を明らかにする試みとなります。次に、売上の各要素を順に見ていきましょう。
「医業収益」は、保険収入と自費収入に分けられます。近年、保険収入は医療費抑制の影響でなかなか伸び悩んでおり、自費分野を強化する動きが増えています。この自費率(自費収入/医療収益)を把握しておけば、自院の強化がうまくいっているかがわかるのです。
ちなみに、“強化”とは「患者さんのニーズを適切に把握し、患者さんへのPRが十分に功を奏しているのか」という意味です。従って、自費率が上がっていなければ、患者さんのニーズとずれていないか、患者さんにうまく伝わっているのかを再検討する必要があります。
日々の「来院患者数」は、新患と再来患者に分けることができます。そこから導き出されるのが、新患率(新患数/全患者数)と再来率(再来患者数/全患者数)です。新患率はクリニックに新規の患者さんがどのくらい来院したか、再来率は過去に来院した患者さんがどれくらいリピートしているかを表します。
また、来院患者数を曜日別に分析すれば、何曜日に患者さんが多いのか、あるいは少ないのかなどが把握できます。この情報をもとに、混雑状況をホームページで開示することで、来院患者数の平準化にもつながります。
「患者平均単価」は、患者さん1人あたりの単価を平均化したものです。この単価は、保険であれば診療行為の組み合わせにより構成され、自費であればどのメニューを選んだかで構成されます。
患者平均単価は、前月・前年と比較したり、業界平均と比較したりして、自院の現状のレベルを把握することが可能です。患者平均単価を上げるためには、次に紹介する診療行為別分析をもとに、検討する必要があります。
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