医院開業コラム
クリニック経営者のための医療ICT活用メソッド 第24回
2020.05.19
新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中で蔓延する中、拡大を止めることが各国の至上命令となっており、医療におけるAIの活用に期待が集まっています。そこで今回は、「医療におけるAIの活用」について解説していきます。
「AI」とはArtificial Intelligenceの略で、日本語では「人工知能」と訳されています。AIの歴史は古く、1950年代にさかのぼります。2020年現在は第3次ブームといわれており、ディープラーニング(深層学習)技術の発展やビックデータの普及などで、大量のデータ(画像や映像も含む)から必要な情報を抽出することが可能です。
AIはさまざまな分野に広がりを見せ、医療分野でも実証実験および実用化が始まっています。医療分野におけるAIの活用では、2016年に東京大学医科学研究所でIBMのワトソンが診断の難しい特殊な白血病をわずか10分ほどで見抜き、患者さんの命を救ったケースが有名です。国内で初めてAIが治療に影響を与えたといわれています。
また、一般の診療の世界ではCTやMRIなど画像診断の分野での研究・活用が始まっています。画像認識技術の進化により、機械学習による医用画像診断支援が可能になりました。AIをダブルチェックやスクリーニングの手段として用いることで、医師の負担を大きく軽減し、診断精度の向上に寄与できるものと期待されています。
2019年末から始まった新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中の多方面に大きな影響をもたらしています。新型コロナウイルスの勢いはいまだ衰えを見せず、わが国でも全国に「緊急事態宣言」が出されました。感染拡大を止めるため、全国民に不要不急の移動を避け、自宅で待機することが求められています。
膨大なデータの中から的確な情報を分析・抽出できるAIであれば短期間で成果が期待できるため、このような背景から新型コロナウイルス対策へのAIの活用が急ピッチで進んでいるのです。それでは、具体的な活用について見ていきましょう。
1. 診断支援
新型コロナウイルス感染患者を特定するためには、多くのPCR検査を迅速に行うことが必要です。「この特定を急ぐことこそ拡大防止策として有効である」と、簡易検査キットの開発が各国で進められています。しかしながら、検査キットの供給には限界があるため、肺のCT画像による診断が組み合わせて用いられています。
そこで、医療機器を開発するメーカーとAIによる分析を得意とするベンチャーがタッグを組んで、CT画像やレントゲン画像の解析を自動で行うシステム開発が急速に進められているのです。新型コロナウイルス感染症の拡大が世界で最も早く始まった中国では、CT画像の解析にAIを活用し、放射線科医の負担を軽減する試みが行われています。
2. 新たな治療法やワクチンの発見(創薬)
新型コロナウイルスの感染拡大には、診断支援とともに治療法やワクチンの開発が急務です。新型コロナウイルスの構造を解明し、それに作用する新薬を開発する必要があります。
わが国でも、NECが独自のAI技術を活用して新型コロナウイルスの遺伝子情報を解析し、製薬会社などと連携してワクチンの開発に乗り出すことが発表されています。NECは従来のがんのワクチン開発に使っている独自のAI技術を活用して、3月から新型コロナウイルスの数千種類の遺伝子情報を解析してきました。
その結果、患者さんの免疫機能を高める抗体をつくる可能性を持つ、複数の抗原を特定できたとのことです。この解析結果をもとに、今後、国内外の製薬会社や研究機関などと提携して、ワクチンの開発に乗り出す方針となっています。
関連資料:NECプレスリリース「NEC、新型コロナウイルスに対するワクチンの設計に向けて、AIを活用した遺伝子解析の結果を公開」
https://jpn.NEC.com/press/202004/20200423_01.html
3.感染拡大の予測 (さらに…)
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