医院開業コラム
FP佐久間のみらいマネー研究所 第8回
2018.07.03
前回、医療法人や株式会社(ここでは2つを合わせて法人と呼びます)を契約者とする生命保険は、保険料の一部、または全部を損金算入できるという点についてお話しました。また、保険金や給付金の受取人が法人の場合は、注意点があることも考えなければなりません。
以上を踏まえ、今回は法人で加入する生命保険がどのような場合に有効なのかを考えてみます。
法人で生命保険に加入する目的は、おおむね以下に分けられます。
1. 経営者(理事長)としての事業保障
2. 役員・理事の死亡退職慰労金、弔慰金支給の財源確保
3. 理事の勇退退職慰労金の財源確保
4. 経営者(理事長)の相続・事業承継対策
5. 職員の福利厚生、退職金の財源確保
では、それぞれの考え方や加入すべき生命保険について見ていきましょう。
1. 経営者(理事長)としての事業保障
経営者に万が一のことがあった場合、その事業を継続するための保障を考えます。 一般的に事業保障として必要な資金は「(人件費+固定費+リース料+借入返済金額)×経営が安定するまでの期間+一括返済が必要な借入金や債務」で計算されます。
一般的な企業では、経営が安定するまでの期間を6ヶ月程度で考えることが多いようです。しかし、医療法人の場合は代表者(理事長)が医師であることが必須なことから、次の経営者が決まらないことが多くあります。そのため、安定するまでの期間が長く必要な場合が多く、慎重な検討が必要です。なかには清算するケースもあり、その場合には清算のための費用も考慮しなければなりません。
この目的での生命保険の加入は、保険料が小さくて保障額が大きい「定期保険」を検討いただくことになります。ただし、生命保険金は法人の益となるため、返済などの損金算入できない資金の手当ての場合は注意が必要です。
2. 役員・理事の死亡退職慰労金、弔慰金支給の財源確保
次に、役員・理事に万が一のことがあった場合の死亡退職金や死亡弔慰金について考えます。前回も触れましたが、一般的に死亡退職金の額は「最終報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率 + 功労加算金」、
*功績倍率の例:理事長3.0 常務理事2.0 理事1.5 など
*功労加算金は貢献の度合いに応じて、退職慰労金の30%を超えない範囲
加えて死亡弔慰金が 「業務上の死亡の場合:死亡時報酬月額 × 36ヶ月」、「業務外の死亡の場合:死亡時報酬月額 × 6ヶ月」 で計算されます。
この目的での生命保険加入は、1と同様の「定期保険」か、後述する「勇退退職金」の対策と併せて検討いただくことになります。
3. 理事の勇退退職慰労金の財源確保
続いて、勇退時の退職慰労金についてです。勇退退職慰労金の額は、死亡退職金と同様に「最終報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率 + 功労加算金」とされています。
*功績倍率の例:理事長3.0 常務理事2.0 理事1.5 など
*功労加算金は貢献の度合いに応じて、退職慰労金の30%を超えない範囲
次に、実際の金額を例に挙げて退職金の税制について確認していきましょう。
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