医院開業コラム
クリニック空間設計思想~共通の軸と、科目別アプローチ~ 第6回(前編)
2026.11.05
患者さんにとって、初めて訪れるクリニックには不安感がつきものです。自分の体調がすぐれない中で訪れるわけですから、当然のことだと思います。そこで重要なのが、患者さんに安心感を与えることです。クリニックを「迷わない・見えない・聞こえない」設計にすることで、患者さんに安心感が生まれます。
前回までのコラムでは、クリニック全体のレイアウトや、診察室・処置室・検査室といった診療エリアの考え方についてお話ししてきました。今回からは少し視点を変え「患者さんから見たクリニックのレイアウト」を、前編・後編に分けて解説します。
私たち設計者が図面を見るときには、各部屋の大きさ・通路幅、医療機器の大きさ・設置場所、各設備の位置などを平面図の上から見て考えます。しかし、当然のことながら、患者さんはクリニックを上から見ることはありません。
患者さんが体験するのは「入り口から入って受付を探す→待合室で待機→名前や番号を呼ばれてから診察室へ入る→必要に応じて検査や処置を受ける→会計を済ませて帰る」という一連の流れです。その途中で、患者さんは「受付や診察室の場所が分かりづらい」「診察室の話がほかの人に聞こえていないか」といった小さな不安やストレスを感じることがあります。
これらは診察そのものとは関係ありません。しかし、患者さんのクリニックに対する「安心感」や「また来たい」という印象に大きく影響します。クリニックのレイアウトを考える際には、効率だけでなく、患者さんが来院してから帰るまでを“一つの体験”として捉えることが非常に重要なポイントになるのです。
まずは、患者さんが「迷わない」レイアウトから見ていきましょう。患者さんにとって快適なクリニックとは、説明されなくても、次にどこへ行けばよいかが自然に分かるクリニックです。
先ほどお話しした「受付→診察室→検査室・処置室→会計」という一連の流れが分かりやすく、スムーズに移動できる。一見すると当たり前のことですが、受付が入り口から見えない、診察室の数が多くて分かりづらい、検査後どこへ行けばいいか迷ってしまうなど、実際のクリニックでは意外にできていないことがあります。
その結果、スタッフが都度「こちらへどうぞ」「次はあちらでお待ちください」などと、動線を細かく案内しなければなりません。患者さんにとって分かりづらい上に、スタッフの仕事が増え、時間が余計にかかってしまいます。設計の段階から患者さんの視線や移動方向まで考えることが、案内の手間を減らすことにつながるのです。
しかしながら、長期間にわたって開業場所が見つからず、ようやく見つけた物件がレイアウトしにくいこともあるでしょう。その場合は、院内サイン計画を入念に検討することが重要です。院内サインを適切な場所に配置し、患者さんが次の場所へ移動する際に一目で移動場所が見えるような配慮をすることで、患者さんの迷いを減らせます。
次は「見えない」設計です。クリニックの設計では「何を見せるか」と同じくらい「何を見せないか」が重要になります。
■患者さんに見せたくないものの例 (さらに…)
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