医院開業コラム
クリニック空間設計思想~共通の軸と、科目別アプローチ~ 第5回
2026.09.09
前回は、クリニックのレイアウトの肝となる動線と、診察室や処置室など基本的な部屋の配置についてお話ししました。今回取り上げるレイアウトのテーマは「診療効率」です。
クリニックの診療効率は、診察室と処置室、検査室の配置で大きく変わってきます。例えば、ドクター1名で診察する場合、診察室は2つで十分でしょう。診察室ばかり増やして処置室が狭くなったり、スタッフ通路が狭かったり、収納が不足したりすれば、かえって診療効率が悪くなります。
ここからは、診療効率を最大化する「診療スペース」の作り方をお伝えしていきたいと思います。
最初に設計をするにあたり、待合室の広さや椅子の数、部屋・ベッドの数、導入する医療機器などは容易に想像できます。最終的な判断基準として考えたいのは下記の点です。
ここまで検討して初めて、より良い設計プランが出来上がってくるといえるでしょう。診察室の数は1つでいいのか、2~3室必要なのか。当然、1診体制より2・3診があれば、より多くの患者さんを診ることが可能です。
しかし、診察室の数を優先すると、処置室が狭くなり、採血・点滴・処置が重なってしまうことも考えられます。ここがボトルネックとなって、診療効率が悪くなるケースも見受けられます。
検査室についても同様です。検査室は導入する、または将来導入するかもしれない検査機器から逆算して部屋の大きさを確保していきます。つまり、機器ごとにサイズや電気容量、重量、搬入経路を事前に考慮する必要があるのです。
例えば、CTやMRIを導入する場合には、テナントに十分な電気容量が備わっているかを確認します。電気容量が足りない場合は、既存のキュービクル(高圧受電設備)から供給が可能か、新規で電気を引き込めるのかを検討します。
また、電気容量だけでなく、荷重の問題もクリアしなければなりません。荷重計算を行い、既存の床が荷重に耐えられるのかを見極めましょう。耐えられない場合は、梁の上に設置する、梁と梁の間に鉄骨を乗せて重量を分配するなど、設置場所を変えることでクリアできるかを検証します。こうして設置可能な場所を軸として他の部屋を配置し、クリニックとして成り立つかプランニングしていきます。
最後に、搬入経路の確認です。CTやMRIは分解して搬入できますが、ガントリー部分(人間が入る丸い部分)の分解は難しいです。メーカーにより、どこまで分解できるかも変わってきます。そのため、エントランスドアや窓を取り外して搬入するケースも少なくありません。ビルによっては、外壁に新たに開口を設けて搬入するケースも見られます。
また、将来的な機器の入れ替えも想定されますので、内装の間仕切りの位置も重要です。例えば、入れ替えの際に多くの間仕切り壁を壊し、入れ替え後に再度復旧するような場合は、コストや休診期間もかかります。
上記のような大型の医療機器以外でも、エコーなどは電気容量を多く使いますし、眼科の検査機器も将来的に増えていく傾向です。新規で医療機器を導入するためには、間仕切り壁を壊して区画を調整する場合もあります。すでに開業後数十年経っているのであれば仕方ないのですが、開業後数年でこのようなケースは絶対に避けるべきです。
間仕切り壁を1カ所動かすだけでも、電気設備工事ではスイッチ・コンセント・照明器具の移設、弱電設備工事ではLAN移設、床・壁・天井の仕上げ工事(塩ビタイルや壁紙貼り)が最低限発生するでしょう。場合によっては、エアコンや換気扇の移設、手洗い器や流し台の移設まで必要なケースも考えられます。

この記事をシェアする