医院開業コラム
現場発!クリニックの人材マネジメント 第1回
2017.01.17
初めまして、株式会社Honest styleの清水です。私は、医療・介護・福祉・歯科の全国各施設において人財育成コンサルタントとして、接遇を基本とした、人財育成・組織改善・各種講演・カウンセリングなどの仕事をしています。このコラムでは、約1年間にわたって、クリニック開業準備から開業まで、知っておきたい人財育成についてのお話をお届けしてまいります。
第1回は、クリニックの理念についてです。なぜ理念が必要なのか?理念がどのような役割を果たすのか?について、解説していきたいと思います。
クリニックを開院するときには、様々な準備が必要になります。建物、医療機器はもちろんのこと、スタッフの確保、ホームページの制作など、数えたらきりがなく、すべて経営には必要不可欠です。その中で、多くのクリニックが見落としがちなのが「理念」です。「理念」は非常に重要なものですが、開業時に作らない組織や、作っていてもまったく意識されていない組織がほとんどです。スタッフルームに理念が掲げてあっても、「貴院の理念は何ですか?」と質問すると、答えられないスタッフが多いのです。ではなぜクリニックでは、一般組織で非常に大事にされている「理念」を重要視していないのでしょうか?私は、「理念」に対する意識を変えることが、とても重要なことだと考えています。
私は人財育成コンサルタントとして、全国の公的医療機関、クリニック、介護・福祉施設、歯科医院などにおいて、組織の問題点、「人」に関わることを専門に、院外人事部の立場で医療接遇を基盤としたコンサルティングを行っています。その中で初回訪問の時に、必ず確認することがあります。それは、その組織の「理念の有無」です。理念がない組織においては、院長の考える組織の方向性を文章化していただき、場合によっては、理念を作ることから組織づくりを実施します。
理念とは、“組織が目指すもの”、“組織がこうあるべき”という根本の考えであり、組織の目的でもあります。この目的に向かって、多数の目標をたてて、組織が進んでいきます。
「進む方向を一つにして、スタッフ全員がそれに向かっていく」、これが組織として最も重要です。とくに、医療の現場はチームワークがものをいいます。各部署(各専門家)が連携をとらなければならず、個々人の考え方だけで進むことは、とても危険なことです。それぞれにいろいろな考えや手法があったとしても、皆がひとつのゴールを見据えて行動することがチームワークを生むのだと思います。
しかし、医療機関は、専門に特化しており、入職してすぐに臨床の現場に入っていくのが一般的です。それゆえに、自分自身のやり方、考え方で進めることに慣れている人も多いのです。そのため、学生から社会人に、もしくは、中途採用だったとしても、組織の進む方向性を意識できず、ともすれば、理念の統一がなされない、一人ひとりの意識がバラバラの組織ができあがります。当然、対応するスタッフの気持ちがバラバラになっていれば、患者さんに不信感を与えてしまいます。また、スタッフ自身も自分の進む方向性に悩み、目標を立てることもできず、チームワークなどとは程遠い考え方を築いていってしまうのです。その結果、一人ひとりの行動がどこに向かっているかもわからないまま、ただ黙々と仕事をし、目標もなければ確固たる考えもない、「言われたことだけをこなす人たちの組織」ができてしまうのです。そうなれば組織のモチベーションも下がります。
理念を通じて経営者とスタッフの意識を統一し、進むべき方向性に向かって進んでこそ、一体感が生まれ、患者さんが不安なく通院できる組織ができあがります。スタッフが働きやすい環境を作り、患者さんが安心して通院できる医療機関になるためには、組織の進む方向を明確にすることが、組織発展の第一歩だと思います。
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