医院開業コラム
必見!再発見!知っていることも多いけれど改めて語る物件コラム 第2回
2023.12.04
クリニックの開業に必要な3要素「ヒト」「モノ」「カネ」のうち「モノ」にフィーチャーした本シリーズ。「モノ」に最も大きな影響を与える“物件”にまつわる知識を、アイセイ薬局のコンサルタントがご紹介します。
第2回では、首都圏における物件選定について、立地カテゴリー別に特徴とポイントをまとめました。都心か郊外か、駅前かロードサイドか、住宅地か再開発エリアを狙うか……。目指す医療に合った選択をするためのノウハウと共に、首都圏以外のエリアにおける物件選定にも役立つ基礎知識も解説します。
【プロフィール】
平川 宗史(ひらかわ そうし)
医療モール開発・開業サポート担当:首都圏
内装計画を含む物件関連全般、および会計や経営の知識が特に豊富なコンサルタント。コンビニエンスストアに19年間勤めた経験があり、9年間はスーパーバイザーとして各店舗の経営管理を、10年間は店舗開発部門で物件選定から店内デザインまで幅広く担当していた。物件提案から開業後の経営に関する相談まで、一貫してドクターに伴走できることが強み。
【プロフィール】
井上 一登(いのうえ かずと)
医薬品卸業を営む会社の営業職を経て、2020年にアイセイ薬局へコンサルタントとして入社。多数のクリニックのより良い診療環境づくりに携わる中で培った視点や知識を生かし、医師の意向を尊重しつつも、臆せず的確なアドバイスを送るコンサルティングのスタイルが高く評価されている。
――「開業が成功しやすい物件」はあるのでしょうか?
平川:開業が成功しやすい物件は“どのような医療を提供したいか”によって異なるため、一律の正解は存在しません。自分を成功に導いてくれる物件を探すには、まず「立地別の特徴」をきちんと押さえた上で、目指す医療スタイルに合う候補を絞っていく必要があります。ここでいう立地とは、まず「都心」と「郊外」の2つのカテゴリーに大きく分けられるでしょう。首都圏の場合は、ざっくりと「都心=23区内」「郊外=それ以外」と考えてもらえればいいかと思います。
井上:都心の特徴としては、集合住宅が多いため診療圏内の夜間人口の割合が高いことと、クリニックの存在を早期に認知してもらいやすいことが挙げられます。一方で、競合医療機関も多い点や、賃料が高いためにランニングコストが膨らむ点も忘れてはいけません。郊外の場合は、都心に比べて競合が少なく、賃料も安くなる傾向にあります。ただし、日常的にクリニックを視認する人が少ないため、認知されるまでに時間がかかります。また、患者さんは基本的に車で通院できる範囲から来るので、専門性の高い科目で広範囲から集患したいといったケースには向かないでしょう。
――都心の場合は、強力な競合が周囲にいない物件を探すことが肝になりそうですね。
井上:競合の調査はもちろん重要ですが、それだけクリアすればいいわけではありません。例えば、どのような世帯層が住んでいるエリアかは、必ず確認することが必要です。単に人口や年齢だけをみれば良いというわけではなく、単身世帯やDINKS、つまり若い世代が多い地域は受診率が低く、期待した集患ができないというケースも考えられます。
それから、物件が駅からメインの徒歩動線にあるかどうかも重要なポイントです。一本でも裏道に入ると、一気に認知されにくくなります。これは診療圏調査だけでは分かりにくいので、現地を歩いて確認してください。
平川:競合調査について少し補足すると、主に都心では、同科目のクリニックと共生関係になれることもあります。例えば、オペを行わない眼科クリニックが、白内障手術の患者さんを別のクリニックに紹介するようなケースですね。特に専門性の高い医療の提供を目指している場合は、共生できるかどうかの視点を持って調べてみてください。
――郊外の場合は「認知してもらえるか」がカギになりそうですね。ほかにも注意すべきポイントはありますか?
井上:認知されやすい物件を選ぶこと以外では、そのエリアの将来性にも着目する必要があるでしょう。郊外には人口が減少している地域もあるため、人口増減率の確認は必須です。また、戸建ての持ち家に住む高齢者世帯が多いエリアでは、子どもや中間年齢層が少なく、近い未来に空き家が増える可能性も考えられます。今現在見えていることだけでなく、その場所で長くやっていけるかどうかを十分に検討してください。
平川:また、競合が少ないとはいえ、その調査はもちろん十分に行うべきです。患者さんが「ほかにクリニックがないから」と集まっている競合と、地域に根づいて信頼を築いている競合とでは、勝機が大きく異なります。そして「競合=クリニック」と考えるのは早計です。特に地方に多いケースですが、急性期に力を入れている病院も競合になり得るので、視野を広げて調べてみましょう。
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