医院開業コラム
ドクターのための医業経営力養成講座 第3回
2015.12.22
前回はキャッシュの重要性について説明しました。今回は節税と資金繰りについてお話したいと思います。
事業を始めて程なく経つと、経営者である院長先生は税金に追いかけられる感覚に襲われると思います。(そのほか社会保険料もありますが。)ところが、ひと口に税金といっても、所得に応じて負担する所得税や住民税、法人税、事業税といったものから、所得に関係なく発生する消費税や固定資産税などさまざまです。税金は私たち市民が国や地方自治体を支え、そのサービスを受けるためのコストですから、支払能力に応じて負担していかなければなりません。とはいえ、払わなくてもいい税金を払わされたとしたら誰も納得はしないでしょう。そこで、なるべくであれば限られた経営資源である資金(=キャッシュ)をうまく使って、なるべく手許におカネを残す手段である”節税“を考えます。
節税と聞くとどんなイメージをもつでしょうか?その意味を調べていただくとわかるのですが“税法の想定する範囲で税負担を減少させる行為”とあります。ここでハッキリ分けておかなければいけないのは“偽りその他不正な行為により納税を免れる行為”である脱税とのちがいです。脱税は犯罪行為になってしまいます。
節税を意識し過ぎるとかえって余分なキャッシュアウトを招きます。大量の消耗品を購入したり、将来にとってあまり効果のない保険へ加入してしまうなどです。節税のために無駄遣いをするくらいであれば、節税しないで税金を払ったほうがお金は残ります。いつの間にか税金を少なくすることが最大の目的となってしまい、やり過ぎた結果として事業の体力を弱め、発展を妨げてしまっては本末転倒です。何事も“過ぎたるは及ばざるがごとし”です。
もうひとつ注意しておかなければいけないのは、お金には色がないので、ついドンブリ勘定になってしまいがちなところです。つまり、動かしているお金のすべてが使える訳ではなく、そこには支払いや、預かり金、税金のような一定のコストが含まれていることを織り込んでおかないと、いざというときに資金繰りがショートしてしまいます。モノを買えばすぐ請求書が届きますが、税金は忘れたころに追いかけてきます。
そこで、払うべきコストが先に見据えてお金を動かしやすくするために、たとえば税金のことであれば「納税予定表」をキチンと準備しておくことが役立つでしょう。これは会計事務所に頼めば提供してもらえる書類です。
税法には実務的な判断もともないます。節税をしようと思ったら、そのお金の使い方にある一定の合理的な説明ができるくらいの準備がいります。それには目先の安易な思いつきや拙速な方法を避け、なるべく時間を味方につけながら、想定される方法を見極めて計画的に行うことをおすすめします。
以下に、決算を組むにあたっての節税・資金対策のチェック項目をあげました。項目は実行コストの度合いによってレベル分けをおこなっています。決算3か月前くらいを目途に、検討の参考にしてください。これらはいずれも税法の想定する範囲内の話です。
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