医院開業コラム
クリニック経営者のための医療ICT活用メソッド 第35回
2021.04.06
2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催に向けて、政府は「キャッシュレス決済」を諸外国並みのレベルに近づくように推進してきました。その後、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大の影響でオリンピックは延期されたものの、コロナ禍による感染防止対策の一環として非接触決済のニーズが拡大し、大きく進展したように感じます。
そこで、今回はクリニックが「キャッシュレス決済」を導入する意味について解説します。
現在、少子高齢化、人口減少に伴う生産人口の減少により、生産性向上が叫ばれています。その一環として、キャッシュレス決済が推進されており、無人化、省力化、現金資産の見える化、流動性向上、さらには支払データの利活用による消費の利便性向上、消費の活性化など、さまざまなメリットが期待されています。
政府は『日本再興戦略2016』で、 2020 年に予定されていたオリンピック・パラリンピック東京大会を視野に入れたキャッシュレス化の推進を示してきました。また、2017年 6 月に閣議決定された『未来投資戦略2017』にて、2027 年までにキャッシュレス決済比率を 4 割程度に引き上げることを目標にしています。
少し古いデータですが、経済産業省が示した『キャッシュレス・ビジョン』によると、2015年の世界のキャッシュレス決済比率は、韓国が89.1%、中国が60.0%、アメリカが45.0%と先進国で軒並み40%~60%台に到達する中、日本は 18.4%にとどまっています。
世界各国でキャッシュレス決済が進んでいるのに対し、わが国ではあまり進んでいない理由として、政府は以下のように分析しています。
(1) 盗難の少なさや、現金を落としても返ってくるといわれる「治安の良さ」
(2) きれいな紙幣と偽札の流通が少なく「現金に対する高い信頼」
(3) 店舗等の「POS(レジ)の処理が高速かつ正確」であり、店頭での現金取り扱いの煩雑さが少ない
(4) ATMの利便性が高く「現金の入手が容易」
※出典:キャッシュレス・ビジョン(平成30年 経済産業省)
このような状況を打破するために、政府は「消費税率引き上げ(8%→10%)」に合わせて、2019年 10 月から2020年 6 月末の期間で「キャッシュレス・ポイント還元事業」を実施しました。政府主導で、キャッシュレス決済の利用促進と中小店舗におけるキャッシュレス決済の環境整備を進めてきた結果、同事業の最終的な登録店舗数は約 115 万店にのぼり、中小店舗にもある程度キャッシュレス決済が広がってきたといえます。
しかしながら、中小店舗からは「決済手数料の負担が重い」「店舗への売上の入金サイクルが長い」「多種多様な決済サービスの中からどれを選べばよいか分からない」といった声は、依然聞かれるのが現状です。
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