医院開業コラム
クリニック経営者のための医療ICT活用メソッド 第32回
2021.01.15
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年4月にオンライン診療の制限が大幅に緩和されてから9カ月ほど経過しました。現在第3波が発生し、再び患者さんの減少が深刻になりつつある今、オンライン診療に活路を見出そうとする動きが始まっています。
2020年初頭に始まった新型コロナウイルス感染拡大の影響から、4月に政府は全国へ「緊急事態宣言」を発令し、外出自粛を要請しました。そのような渦中で、医療崩壊を防ぎ、受診が困難な患者さんの受診機会を守るため、政府は時限的・特例的措置として「初診から電話及びオンラインによる診療」を行うことを認めました。つまり、限定的にオンライン診療のさまざまな制限が撤廃されたのです。
また、本来2020年9月から開始予定だった「オンライン服薬指導」も、前倒しで4月から開始されました。今回の時限的措置により算定の制約のほとんどが一時的に解除され、利用シーンが広がったことで、オンライン診療は一気に脚光を浴びていきます。
これまで、慢性疾患を抱える患者さんの再診に限定されてきた電話及びオンラインによる診療が、4月10日の厚労省事務連絡により初診から認められることとなりました。この通知を境に、オンライン診療は時限的とはいえ「疾患」も「対面期間」もほとんど制限なく利用可能になったのです。この措置は、1月現在でも継続して続いています。現在は、恒常的にかかりつけ医に限り、初診からオンライン診療が使えるようにする案が議論されています。
また、4月末には厚労省のホームページで、電話及びオンライン診療に対応する医療機関リストが公表されました。厚労省が、このようなリストをホームページで公開するのは異例のことです。このリストを頼りに患者さんが電話やオンライン診療のできる医療機関を探すとなると、「患者さんによる医療機関選別」が始まるきっかけになる可能性があります。
厚労省の医療機関リストを確認する限りでは、今のところ設備投資の必要がなく、すぐに始められる電話診療が先行しています。コロナ禍で外来患者さんの大きな減少により医業収入が減少している状況では、オンライン診療への投資を抑えたいと考える医療機関も多いと思われます。しかし、補助金などの活用、「LINEヘルスケア」の無償版オンライン診療のリリースなどの影響から、オンライン診療に取り組むハードル(導入コスト)が劇的に下がっていくことが予想されるのです。
2020年12月には、満を持して「LINEヘルスケア」がオンライン診療に本格的に参入し、まずは都内のパイロットユーザーから試運転を開始すると発表されました。
新型コロナウイルス感染症は第3波が到来し、過去最大の感染者数を連日のように更新しています。そのような中、緊急事態宣言時に見られた感染を恐れた患者さんの行動として、「受診控え」が再び起きるのではないかという懸念があります。
実際、徐々にクリニックでは患者さんの減少が始まっています。こういった状況でこそオンライン診療で対応しようと、今春に続き、再び医療機関ではオンライン診療への期待が高まっているのです。
そもそも、オンライン診療は外来診療に比べて取得できる情報が限られているため、外来の「補完的サービス」として位置付けられています。実際、算定するための制約も多く、点数も外来と比べて低く設定されているのが現状です。また、オンライン診療では、検査も処置も手術もできず、実際の診療に比べると大きな制約があるため、利用は限定的と考えられてきました。
そこで、クリニックはオンライン診療をどのように活用していけばよいのでしょうか。 (さらに…)
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