医院開業コラム
分院展開を考えるクリニックのための “医師採用力” 向上委員会 第9回
2019.06.19
かつては、病院で勤め上げた医師が一線を退く形で開業し、ある種“リタイア後のセカンドキャリア”としてクリニックを選ぶ時代もあったと思います。しかしながら、弊社がクリニック専業の医師人材紹介サービスを営む中で「クリニック院長を辞めて次のステップへ」といったお手伝いも増えてきました。
採用する側としては経験のある即戦力として期待が高まる一方で、「前職をどうして辞めたのか」「すぐにまた辞めてしまうかも」「患者さん対応・スタッフさん対応に難があるのでは?」など、つい勘ぐってしまうのも否めません。そこで今回は「クリニック院長からのキャリアチェンジ」について考えてみます。
【予想される未来】
2020年度以降、都市部では実質的なクリニックの開業規制が行われる見込みです。具体的な規制の内容は現在検討中ですが、新規開業の際に「地域で不足する医療機能」、例えば在宅医療、初期救急(夜間・休日の診療)、公衆衛生(学校医、産業医、予防接種等)で、これらの決められた医療機能を担うことが求められます。これが、結果として 「外来医師多数区域」の開業を制限するという制度の設計です(※)。
端的にいえば「都市部では今までより開業しにくくなる」わけですが、それによってクリニック医師の採用にどのような影響が起こるのでしょうか。起こりうる3つの例に関して、私たちは以下のように予想しています。
【起こりうる事態(例)】
1.自然淘汰 :都市部においてクリニック経営の難易度が上がり、収益が悪化。閉院が増える
2.エリア変化:都市部のクリニックの開設が抑制され、郊外・地方での開設が増える
3.スキル変化:クリニック医師に在宅医療、初期救急、公衆衛生の業務経験が求められる
↓
【採用への影響(例)】
1.自然淘汰 : クリニック院長の離職が増え、転職市場への流入が増える
2.エリア変化:人材ニーズはさらに郊外・地方で増え、都市部では減少する
3.スキル変化:在宅医療、初期救急、公衆衛生の非常勤求人が増える
このように、特に都市部のクリニック院長の採用については、すぐ近い未来に大きな環境の変化が予想されます。採用する側においては、転職したい院長経験者を候補者としてよく見かけるようになるでしょうし、また「3.スキル変化」でお伝えした通り、在宅医療、初期救急、公衆衛生の業務経験がすでにある医師は、採用ターゲットとしてより価値が高くなると思われます。
※参考リンク:
「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会第4次中間取りまとめ」を取りまとめました
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000209695_00001.html
しかしながら、院長経験者がすべて即戦力かというと、必ずしもそうは言い切れません。実際にその医師が「クリニック院長としてどのような経験があるのか」「どういった理由で退職に至ったのか」などにより、自院にマッチする医師かどうかが変わります。また、採用した後に法人が支援するポイントも異なってくるものです。
【クリニック院長経験者の類型】
A:自分自身で開業し、経営者としてクリニックを運営していた医師
B:雇われ院長として、クリニックを運営していた医師
C:親または第3者から継承し、クリニックを運営していた医師
【退職理由】
A:閉院
B:院長交代または事業継承(手放した)
C:医師自身のキャリアチェンジ
【支援するポイントの例】
・診療スキルの更新
医師によっては、クリニック勤務を開始してから長い間、同じような診療を続けているケースも少なくありません。こういった医師に対して、OJTや研修を通じて、診療スキルの更新を支援する必要があります。
・採用、人材マネジメントの補助 (さらに…)
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