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医院開業コラム

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開業医のための「医院経営相談外来」

開業医のための「医院経営相談外来」 Q.12

クリニックの経営では何を優先的に行えば良いのですか?よくわからず不安です。

  • 医院開業のポイント

2016.11.09

まずは、クリニック経営の全貌を把握しましょう。その後、それぞれの分野で重要な部分から状況を整えていくようにします。

経営は複雑で難しいものだというイメージを持っている方が多いと思います。確かにその通りなのですが、複雑なものをシンプルに考えると行動しやすくなります。
経営がうまくいっている組織を観察すると、以下すべてが整っていることが多いようです。キーワードは「コ・マ・チ」です。

 

自院にとってのコミュニティ、マーケティング、チームとは何なのか、現状はどうなのかを明らかにして、それを整えていくことで経営がうまく回るようになります。

「コミュニティ」とは、自院を受診する可能性がある人々の集団のことです。地域住民の方々、現在受診している患者さん、過去に受診した患者さんのほか、クリニックのスタッフもコミュニティに含まれます。地域の病院や診療科目の違うクリニック、介護施設、学校、企業、地域の団体などもその中に入ると考えられるかもしれません。これらの人々は自院に患者さんを連れて来てくれる可能性があります。自院のコミュニティにはどのような人、組織、団体が入るのか、今一度考えてみてください。

それができたら、このコミュニティに向けてマーケティングをします。マーケティングというと難しそうですが、要は「コミュニティの方々のニーズを明らかにする」ということです。頭で考えてもよくわからないかもしれませんが、観察したり、直接聞いてみたりして、どのような診療・サービスを望んでいるのかを明らかにし、それをコミュニティに適切に伝えていけばいいのです。

チームとは、クリニックのスタッフをはじめ、自院の経営を行うために欠かせない方々のことです。薬局や薬の卸業者さん、MRさんなど様々な業者さんや税理士・社会保険労務士のような専門家がここに含まれます。口コミなどでクリニックの経営に貢献してくれる患者さんもこのチームの一員だと考えられます。

自院の「コ・マ・チ」が明らかになったら、次はそれを整えていきます。
例えば、現在受診中の患者さんに自院の良いところを聞き、それを明らかにして地域の方々にアナウンスしていく、といったようなことです。
すでに来院している患者さんが自院を選んでいる理由は、まだ受診していない住民のニーズに一定の割合でマッチするでしょう。患者さんの多くが悩んでいる症状や、それに対する良い治療方法が見つかったら、それをアナウンスすることもマーケティングの一環です。

このような地道な活動を様々なコミュニティに対して繰り返すことで、診療・サービスのレベルが上がっていきます。そうなれば患者さんの認知度が上がり、選んでいただけるようになります。

これらは言葉で書くと簡単なようですが、院長先生一人だけで行うことは困難です。スタッフはもちろん、外部の方々の力も借りながら進めていくことになります。もちろん、チームのメンバーが同じ思いを持って気持ち良く動ける環境でないと成果は上がりません。ですから、彼らが円滑に動ける環境づくりも欠かせません。

「コ・マ・チ」が整うと、経営がうまくいくようになり売上・利益が上がります。そうなればお金が入ってくるので、お金のマネジメントをする必要が出てきます。これは医業経営と個人の家計の両方の視点から行う必要があります。長期的な視野で行わないとマネジメントの方向性を見失いかねませんので、要注意です。

シンプルにクリニック経営の全貌をお伝えしましたが、何か行動するときには、その目的を考えましょう。「コ・マ・チ」のどこを整えているのかを意識するようにするのです。そして、できるだけ無駄なことは行わないことが重要です。
クリニックの経営資源は限られています。それをいかに有効活用するのかを考えるようにしてください。やらないよりやったほうが良いことにあまり力を注がないことです。また、一般論や常識論で考えるのではなく、自分のクリニックに適していること、できることは何なのかを個別の視点で考え、行動するようにしてください。

クリニックは一つ一つがまったく違った個性を持った組織です。院長先生やスタッフのキャラクター、強み・弱み、複数の人間が集まることでできあがる組織の風土などによって、それぞれ異なってきます。一つとして同じクリニックはありませんから、たとえ同じことをするにも、スムーズにできるところ、まったく手もつけられないところが出てくるのは当然なのです。自院では何ができるのか、どのようにできるのかをじっくりと考えて行動してみてください。
世の中には、大きな組織で成功しているとされることや、「これさえやれば上手くいく」といったノウハウが溢れていまが、その多くは規模の小さなクリニックでは実践できないか、できても上手くいかない場合が多いのです。

良い経営は一朝一夕にできあがるものではありません。また、これで終わりということもありません。現状を明らかにして、自院の個性や力を冷静に見極め、できるところから行動し、環境を整え続けることで、良い経営ができあがっていくのです。

12回にわたる連載も今回で終わりとなりました。これまでお読みいただき、ありがとうございました。
クリニックの経営は、朝から晩まで診療をしながら行わなければなりません。これは大変厳しいことだと思います。また、医学部や勤務医時代に経営について学ぶことはほとんどありませんので、不安やストレスを抱えながら経営をされている方が多いのではないかと思います。
そんな時に頼りになるのが、チームのメンバーです。チームはクリニックのスタッフのみではなく、クリニック外の方々もその一員だと考えてください。その中でも重要なのは、クリニック経営やライフプランなどを総合的に考えサポートしてくれる「院外経営幹部」のような存在です。
1日も早く、そのような方とのご縁ができ、皆様の経営がますます良くなっていくことをお祈りしています。

 

※このコラムは、2016年10月現在の情報をもとに執筆しています。

 

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執筆者紹介

近藤 隆二

近藤 隆二
(こんどう りゅうじ)

医業経営コンサルタント
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会)
非営利団体 医業経営研鑽会・副会長
米国NLP™協会認定NLPマスタープラクティショナー

大手OA機器メーカーで12年、生命保険会社で12年勤務した後、医業経営のコンサルティングの仕事に携わる。「部分最適ではなく全体最適を考える」ことを貫き、さまざまな状況に応じたフレキシブルなコンサルティングを得意とする。コミュニケーションを密にすることで、それぞれのお客様にとって本当に良いことは何か、お役にたてることは何かを、常に考え続けている。
近藤隆二氏のホームページ「ドクターよろず相談所」はこちら

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