医院開業コラム
わが子を医師にするための9つのルール 第1回
2015.10.05
この度「わが子を医師にするための9つのルール」というタイトルでコラムを連載することとなりました、「NPO法人横浜子育て勉強会」の藤崎達宏と申します。
私は「子育てコンシェルジュ」として、これまでに2,000組を超えるご家族の子育て相談をお受けし、地域性を踏まえた教育シミュレーションをもとに、それぞれのお子様にふさわしい将来のコーディネートをしてまいりました。その多くは医師、弁護士、パイロット、企業経営者などといった社会的地位のあるご家庭からのご相談であり、彼らの願いの多くは、「わが子・わが孫を医師へと導いてほしい」という切実なものでした。
このコラムでは、そうしたご相談の中から見えてきたルールを、全身全霊を込めて公開してまいります。
皆様のご子息には「単に医学部に合格するためのノウハウ」を得るだけでなく、「常に学び続ける、倫理観のある、腕の良い、世界人類のために貢献する医師となっていただきたい」。そのような切なる想いを込めて綴ってまいります。
これから定期的にお届けいたします私のコラムが、皆様が歩む険しい道のりの「水先案内」となれば幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
最初に大変残念なお知らせがあります。
「100%わが子を医師にする方法はございません!」
なぜならば、皆様のご子息は一人の人格であり、自分の意志があるからです。
「医師になんかなりたくない」と言っている子どもの首根っこを掴んで、無理やり医師にさせることはできませんし、すべきではありません。また、医師になることは、「医師になりたい」という強い志と、卓越した学力を伴わなければ到達できる目標ではないからです。
私ども親にできますことはただひとつ!「わが子が自らの将来を真剣に考える年齢になった時、自らの強い意志で医師を志そうとする確率を上げる」ことだけです。
「な~んだ、確率を上げることしかできないのかぁ」などと、ぼやいている場合ではありません。今からやらなくてはいけないことが山ほどあるからです。
皆様が足を踏み入れる道のりは、単なる観光旅行ではないのです。登山でいえばエベレスト登頂、探検であれば南極点到達といえるでしょう。そう考えれば、10年スパンでの緻密な準備、情報収集、シミュレーション、体力づくり、資金の調達まで、あらゆる準備が必要であることがおわかりいただけると思います。わが子を医師にするということは、「両親はもちろん、両祖父母をも巻き込んだ、壮大な一大プロジェクト」なのです。
このコラムでは、このプロジェクトを計画的かつ戦略的に遂行していく手段と、そのルールを紐解いてまいります。それではまいりましょう!
皆様は「アリストクラシー」という言葉をご存知でしょうか?もしかしたら高校の世界史で習った方もいらっしゃるかもしれません。「アリストクラシー」というのは、貴族制を意味する言葉で、「生まれ」によって、その子の身分、職業といった将来が決まってしまっている世の中のこと。日本においても士農工商などという時代がありましたよね。
それがやがて、資本主義、民主主義の発展により、生まれや身分、階級などに囚われず、自らの能力に努力を加えて、職業を選び、成功を勝ち得る時代となりました。社会学者のマイケル・ヤング氏は、これを「メリトクラシー」と定義しました。努力や勉強といった、自分自身が生み出すメリットによって人生を切り拓く、ということですね!そういった意味において、ドクターは自らの能力と努力によってライセンスを勝ち得た“メリトクラシーの頂点”といっても差し支えないでしょう。
しかしながら、時代はさらに流れ、昨今においては「親の情報収集能力と、適切な環境を選択する親の力、そしてそれを可能にする親の財力が、子どもの地位達成を左右する時代」になったのです。この状況は「ペアレントクラシー」と称されるようになりました。まさしく、子ども自らの努力から、親が努力する時代に変化したといえるでしょう。
昔の親は決断をしなくてもよかったのです!皆が同じ近所の小学校に行き、皆が同じ中学校に通い、皆が同じように高校受験をする。親がすべき決断はただひとつ、「大学の学費を出すか出さないか」だけだったのです。準備に関しては、「かんぽ生命」の学資保険に一本入り、「あとは子ども自身ががんばればOK」という時代でした。
しかし現在の子育ては、「親が決断すること」の連続です。その代表が「中学受験をするのか、しないのか?」「そのための塾は、どこに、いつから通わせるのか?」「塾代はどうするのか?」といったものです。
そうした決断は幼い子どもではなく、全て親に委ねられているのです。決断だけではありません。塾に通うことになれば、資金の捻出はもちろん、送り迎えやお弁当づくり、公開模試に学校見学、ノート整理にいたるまで、親の役割は増大し、親の献身的な支えがないと成り立たない状況となっているのです。まさしく「ペアレントクラシー」の時代なのです!
しかし、これは医学部を目指す家庭に限ったことではありません。例えば、スポーツの世界はどうでしょう?野球であればイチロー選手、体操であれば内村航平選手、ゴルフでいえばタイガー・ウッズ選手、横峯さくら選手、卓球の福原愛選手、テニス界では、杉山愛選手、そして錦織圭選手に代表されるトップアスリートたちの成功が、ご両親の献身的なバックアップと、情報収集に基づくトレーニング計画の賜物であることは、誰もがご存知だと思います。そして、それらは皆、0~6歳の幼少期にご両親が「本人が競技に魅了されるきっかけ」と「それを無限に伸ばすための環境」を与えたことが成功の礎になっているのです。
大リーグやマスターズ、ウィンブルドンやオリンピックで活躍するまでには、気の遠くなるような試練があったことでしょう。皆様のご子息が目指す「医師への道のり」も、それに勝るとも劣らない厳しい道のりです。繰り返しますが、山登りでいえばエベレスト級です。エベレストの登頂成功率が38.5%とすると、それ以上の難関ともいえるでしょう。
この険しく長い道のりを乗り越える方法はただ一つ。それは「親の情報収集に基づいた、早くからの長期計画」です。まさしく「親の予習が9割」!
まずは、これがわが子を医師にするための絶対的な「ルール」だと認識することから始めましょう。そう考えると、今からできること、やらなくてはいけないことは山のようにあります。予習と対策を行わずに、その場にいたって初めて、なりゆきに任せた判断を下したり、塾の言いなりになって、わが子の将来を握る大切な決断を下したりすることは“命取り”です。そうならないためにも、早々に「乗り越えなくてはいけない問題」を直視し、しっかりした最新の情報を夫婦で共有することで、わが家ならでは、わが子ならではの「医師への道のり」を、自信を持って歩んでいこうではありませんか!
このコラムは皆様の「ペアレントクラシー」を格段に引き上げることを目的として、執筆してまいります。
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