医院開業コラム
クリニック経営者のための医療ICT活用メソッド 第37回
2021.06.11
診療所向けに電子カルテが世に出てから約20年が経ち、電子カルテの導入が当たり前の時代となりました。現在では、40社を超える電子カルテメーカーが存在し、多くのメーカーから最適な1社を選ぶのは骨の折れる作業といえます。
最近ではクラウドタイプの電子カルテも多く出てきており、「電子カルテをどうやって選べばいいのか」というお問い合わせを多くいただきます。そこで、今回は医療ICTの原点に戻り、電子カルテの選定ポイントについて解説します。
近年の電子カルテのトレンドを語る上で、2010年の「医療分野のクラウド解禁」は、ひとつのターニングポイントとなりました。ここ5年間、従来の「院内サーバー型」の電子カルテから「クラウドサーバー型」の電子カルテが多数出現したことで、業界の地図が激変しています。
また、最近では院内サーバーとクラウドサーバーのメリットを組み合わせた「ハイブリッド型」の電子カルテも出てきています。院内サーバー型、クラウド型、ハイブリッド型それぞれの特徴を比較すると、以下のようになります。
・院内サーバー型:院内にサーバーを置き、基本的にはインターネットをつながないため、インターネットによるトラブルはほとんどない。システムのバージョンアップは、電子媒体あるいはリモートで行われる。
・クラウド型:企業が管理するサーバーに、インターネットを経由して利用する。常時インターネットをつないで使用するため、インターネットのスピードに依存する。インターネットのトラブル時は電子カルテも停止する。システムのバージョンアップは、オンラインで自動的に行われる。
・ハイブリッド型:院内のサーバーと企業が管理するサーバーに、インターネットを経由して利用する。インターネット経由の場合は、インターネットのスピードに依存する。インターネットのトラブル時は、院内サーバーに切り替えることで使用が可能。システムのバージョンアップは、オンラインで自動的に行われる。
このように、電子カルテを選定する際は、まず「どのサーバータイプを選ぶか」を考える必要があります。
電子カルテの「価格」は、クラウド型電子カルテの増加とともに、定額制の「サブスクリプション」を採用するメーカーが増えています。サブスクリプションとは、従来の5~6年ごとに買い替える方式ではなく、継続的に定額で課金する仕組みです。診療所にとっては、長期的な視点でコストの低下が見込めます。
また、コロナ禍ではスタッフ同士の密集を避けることが求められており、できる限り「端末数(パソコン数)」を増やして、スタッフ同士の距離をとることが重要になっています。そう考えると「端末あたりのコスト」も、電子カルテの価格を考える上で重要な要素です。近年では、端末が増加しても価格が上がらないというケースも出ています。
診療所では、電子カルテとレセコンをセットで購入するのが一般的です。そのため、電子カルテとレセコンが「どれだけシームレスにつながるか」という部分が重要な選定ポイントとなります。
日本医師会が日医標準レセプトソフト(通称ORCA)をリリースしてから、電子カルテとレセコンの関係は大きく変化しました。それまでは、電子カルテとレセコンが同一メーカーであることが主流であり「電子カルテ・レセコン一体型」と呼ばれる仕組みが一般的でした。ORCAの出現以降は「ORCA連動型」を採用するメーカーが増え、さらに「ORCA内包型」と呼ばれる、レセコン機能が電子カルテに組み込まれたシームレスな仕組みも出てきています。
レセコンは、カルテに書かれた内容をレセプトに変化することを主目的に開発されています。しかし、電子カルテとレセコンをセットで買うと、どうしてもレセコンの機能を見落としてしまいがちです。この部分はかなり差が出やすい部分ですし、業務効率化のポイントでもあります。特に、算定の際のチェック機能をしっかり確認することをお勧めします。 (さらに…)
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