医院開業コラム
事務長 解体新書(アナトミー) 第2回
2019.06.12
前回はクリニックに存在する組織的な課題のお話でした。その課題を解決する1つとして「事務長」を提案いたしましたが、今回は実際に事務長が「どんな役割を担っているのか」についてお伝えしていきます。
前提として、事務長の定義は“院長と共にクリニックの経営を行うスタッフ”です。ここで一番重要なことは「共にクリニックの経営を行う」という点にあります。“共に”とは、事務長が院長の考えや想いに共感していることを意味します。院長は、事務長に対してクリニックでの「医療」を求めているのではありません。つまり、医療経験や知識は必要ないのです。
では、事務長は何をするのでしょうか。事務長の役割は、院長とスタッフの間に立ち、橋渡しとしてスタッフからの意見を吸い上げ、院長の考えをスタッフに伝えることです。第1回のコラムでもお伝えしたように、院長のもとにはいろいろな業務が集まってきます。
スタッフや患者さんからの意見や相談、苦情などにもすべて対応しなければならず、院長は本当に時間がありません。もちろん、本当に院長が対応しなければならないこともあるため、選定や優先順位付けが必要ですが、多くは院長でなくても対応できることが往々にしてあるのです。
皆さんは「80対20の法則」をご存知でしょうか。「パレートの法則」とも呼ばれており、“80%の成果は20%の要素が生み出している”といわれるものです。普段、院長が行っているたくさんの業務の中で、本当に必要な20%に集中できる環境になれば、今以上に大きな成果を得ることができます。しかし、多くの開業医は、それに集中することができずにいるのが現状です。
では、どうすれば、その20%の環境をつくることができるのでしょうか。答えは「院長でなくとも対応できるものは事務長に任せる」ことです。具体的には、スタッフや患者さんからの意見や相談をまず事務長が受け、院長に相談・対応してもらうべきかどうかを判断した上で必要なものだけを院長へ伝え(報告)、院長でなくともできることは事務長やスタッフ自らが対応することで20%の環境が可能になります。
事務長が自らの役割で重要な考えは「事務長は院長の代弁者である」という認識です。事務長は院長と共にクリニックの経営を行うスタッフであるため、クリニックのミッションやビジョンがある場合には、理解・共感していなければなりません。さらに、その想いを自分の言葉で伝えていかなければならないのです。
「院長が言っていたことは、こういうことです」「院長ならこのような考え方をするだろう。だからこうしよう」など、診療業務やクリニックに院長がいない場合には事務長が考え、行動しなければ、結局すべて院長に集まってしまいます。
しかし、代弁者としての役割にもかかわらず、事務長が院長の考えと正反対の行動をしているようでは、共に経営を行っていくことはできません。また、伝書バトのように右から左に流すだけなら、事務長である必要がないでしょう。
時に院長の意見とぶつかり合うことがあるかもしれませんが、理解し合えるまで話し合い、腑に落ちたからこそ、事務長が“院長の想い”として伝えることが可能になります。自分事として受け止め、院長やクリニックの考えとして自らの言葉や行動で体現することが、事務長の役割として求められるのです。
クリニックに事務長を設置するにあたって、必要なことがもう1つあります。
(さらに…)
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