医院開業コラム
クリニック経営者のための医療ICT活用メソッド 第10回
2019.03.20
インターネットが普及するにつれて、診療所はWEBサイトを活用して集患を行うことが一般的になりました。しかしながら、美容医療サービスを提供するクリニックなどのWEBサイトの内容に関して、虚偽または誇大広告などのトラブルが年々増加しています。それを受けて、2018年6月に、WEBサイトが医療広告の規制対象となるガイドラインが公表されました。
『医療機関ホームページガイドライン』
https://www.mhlw.go.jp/content/000854674.pdf
これまで、医療機関のWEBサイトは広告ではなく広報として位置づけられ、広告規制の対象外となっていました。WEBサイトは、患者さんが自らの意思で訪れるという性格上、誘引性や認知性という観点から規制外となっていたのです。
しかしながら、主に美容分野ですが、WEBサイトに掲載されているビフォー・アフターの写真と治療結果が異なったり、記載よりも高い料金を請求されたりといったトラブルが増えています。こうした不適切な記載について、従来の医療WEBサイトに関するガイドラインには法的拘束力がなかったため、行政が指導しても、なかなか是正されないという問題がありました。そのような現状を踏まえ、病院やクリニックのWEBサイトも、法的拘束力のあるガイドラインの規制対象とする必要があったのです。
まずは、従来の医療広告ガイドラインや「医療機関ホームページガイドライン」などでも禁止されており、新ガイドラインでも引き継がれた内容をご紹介します。
最近、医療機関から「ネットに掲載された口コミを消すことができないか」という相談が増加しています。インターネットが普及し、WEBサイトの口コミ情報を参考に医療機関を選ぶ患者さんが増えており、医療機関もネットの口コミの影響を意識し始めているのでしょう。
例えば「待ち時間が長い」「医師の診察が丁寧ではない」などといった口コミが掲載されていれば、医療機関側は内容に落胆するとともに、なんとかその情報を消せないかと思うものです。患者さんが見たら、医療機関に悪いイメージを抱き、受診を控える原因となりかねません。その結果、来院患者が減ってしまうかもしれないのです。
このような内容について、今回施行されたガイドラインでは、患者さん自らが書き込んだものの場合のみ、広告規制の対象とならないとされています。一方で、医療機関が依頼したコメントは、そこに金銭のやり取りがある場合はもちろんのこと、なかったとしても規制の対象となってしまいます。
つまり、その情報が「患者さん自らが自発的に作り出したものなのか」または「医療機関の依頼で強制的に作り出されたものなのか」の違いによって、規制するかどうかが線引きされるのです。この線引きは、なかなか第三者では判断が難しいところですが、サイトパトロールの結果、明らかに医療機関側の依頼とわかるものには行政指導が入り、改善命令が行われることになります。
ガイドラインの内容を見ると、医療機関のWEBサイトは「誘引性」の観点によって判断されることがわかります。つまり、情報によっては、患者さんに誤解を与える内容の場合、それが仮に正しい事実であっても広告不可となってしまいます。
これからは、サイトの見せ方や表現の仕方を競うのではなく「医療機関としての利便性で差別化を図る」ことを考える必要があるのではないでしょうか。例えば、予約システムを導入して待ち時間の緩和を行ったり、今回の改定で評価されたオンライン診療に取り組んで受診ハードルを下げたりすることも可能です。これらの取り組みは、患者さんにとって利便性を高めることになります。
これからは広告ではなく、具体的な入り口をWEBサイトに設置していくことが大切なのです。患者さんの利便性を高め、患者さんから選ばれるように仕向けることは何の問題もありません。
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