医院開業コラム
実例に学ぶ クリニック内装の機能とデザイン 第9回
2017.10.05
今回は「整形外科と皮膚科」の設計デザインに関するお話です。
まず整形外科ですが、最近は高齢化の影響もあり、リハビリ施設が付いているところが多くなってきています。また、スポーツによる疾患も含め、診察+リハビリ外来(再診)に対応するレイアウトも増えてきました。
設計は、以下の条件などによって大きく異なります。
X線室ですが、整形外科の場合は天井吊レールの設置が大半で、天井は2,800~3,000ミリ程度の高さが必要です。最近は骨密度の測定装置を設置することも多く、X線室内レイアウトに考慮します。
MRIは重量が6,500kg近くあり、三相200V、65KVA程度の電源が必要です。ビル内診療所の場合には、その物件が搬入・設置可能かをチェックしましょう。
C型アームX線TV装置の処置室は、神経ブロック注射などの処置を行いますから、処置用の待合スペースやリカバリースペースも必要となります。
4.リハビリ室などの特掲診療科の施設基準
リハビリ室を特掲診療科、運動リハビリテーションの適合医療機関にするためには、45㎡以上の機能訓練室(リハビリ室)が最低認可条件です。
設置する医療器によってリハビリ室のレイアウトが異なりますし、ウォーターベッド治療器などは、三相200V、4KVAで500kgの重量があります。ビル内診療所のテナント選択時には、この点においてもチェックが必要です。
設計デザインのポイントですが、レイアウトは診察・検査室とリハビリ室の配置が重要になります。再診外来では、診察がなく、リハビリのみの患者さんも少なくありません。そのため、受付・待合スペースからのアクセスが、診察・検査と明確に分離した構成が望ましいといえます。
リハビリ機能を有する整形外科は、雇用する人員や患者数が多くなりますから、最低でも70坪~100坪規模の面積が必要です。足やひざ、腰などに痛みを感じている患者さんのためにも、ほかの診療科以上に段差をなくし、通路や待合スペースに余裕を持たせ、車椅子や歩行補助器具などで来院される患者さんの利便性を考慮します。
リハビリスペースは、スポーツウェアなどへの着替え施設や貴重品ロッカーなどが必要ですし、何よりしっかりリハビリに向き合えるような、のびのびとした環境にすることが重要になります。
次に皮膚科ですが、これは「保険診療の皮膚科」と「自費治療を含めたスキンケアクリニック」かで大きく異なります。
保険診療の皮膚科の場合は、診療単価が低く、収支を考慮すると多くの患者さんを診ることになります。そのため、広い待合スペースや多人数に対応可能な受付が必要です。
ほかにもレーザー治療や、光線療法機器などの電気容量(多くは単相100Vですが1~1.5KVA)のチェックも不可欠となります。レーザー治療の場合は、タンパク質の焦げるような臭いが発生する場合もあり、処置室の換気(特に排気)は単独で設置した方がいいでしょう。外部に直接ダクトが出せることも重要です。
自費治療を含めたスキンケアクリニックは、医療施設というよりもプライバシーを重視したESTサロン的な要素が強いため、通常より処置室の数が必要となります。また、メーク落としやメークアップをするためのパウダールームを設置するケースが多く、ライティングは色温度や自然光・温白色・電球色などへ変更可能な設備であることも重要です。
面積は、保険診療皮膚科の場合は25~30坪程度、自費治療を含めたスキンケアクリニックでは、処置室数にもよりますが50坪以上が必要となります。レイアウトやデザインは、保険診療か自由診療科でまったく違う計画になりますから、この辺りを明確にした上で考えていきましょう。
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