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医院開業コラム

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BYPLAYERS〜医療を支える名脇役たち〜

BYPLAYERS〜医療を支える名脇役たち〜

東洋医学における薬剤師の責務、それはよき通訳者たること。

  • 集患・マーケティング

2017.09.14

薬剤師としてどのような専門性を打ち出していったらよいのだろうか。そう悩んでいるときに出会ったのが、東洋医学でした。
私が店長を務めているアイセイ薬局駿河台店が開局したのは、2012年10月。漢方薬・生薬認定薬剤師が中心となって、漢方薬処方箋を積極的に受け付けており、現在では、漢方薬処方が8割を超えています。製薬企業各社のエキス剤の調剤に加えて、常時150種以上の生薬を用意し、煎じ薬の調製を提供しています。

 

医師と患者さんの「懸け橋」になりたい

私は、東洋医学の考え方を、薬の専門家として患者さんにわかりやすい言葉で伝え、医師と患者さんの懸け橋となりたいと考えています。
東洋医学では、「患者さんの全体的な状態を勘案して、処方を決定する」という考え方を基本としています。そのため、薬局で提供する薬剤情報提供書に書かれている効能効果と、医師の処方意図が異なることも少なくありません。また、流派によってそれぞれに処方方針をお持ちだったりしますので、それらの特徴を広く理解しておく必要もあります

患者さんにとっては、日常生活で耳にしないような専門用語がたくさん用いられます。そのような場合でも患者さんが安心して服用できるように、それぞれの患者さんに適した説明をすることが、薬剤師の務めだと考えています。

一方、処方箋から読み取れない情報に関しては、患者さんから直接お伺いする必要があります。まずは患者さんとの対話の中で、医師とのお話やその理解度を確認し、東洋医学独特の考え方や専門用語に戸惑っていることがあれば、わかりやすい表現に置き換えて説明します。患者さんに医師の意図をより深く理解していただくことが、継続した服用につながるからです。

 

アドヒアランス向上の秘訣は「タイミング」を細やかにお伝えすること

患者さんの東洋医学への理解を深めることに加え、薬剤師のもう一つの重要な使命が患者さんのアドヒアランス向上です。 中国古典の医学書『千金要方』では、“未病をいやす医師”が最も尊いとされています。未病とは、健康診断や検査では異常がなくとも、自覚症状のある患者さんのことです。

漢方薬は、ある程度長期的に服用し、体質や全身の状態を改善することが目的です。西洋医学では薬の成分の吸収過程や血中濃度への作用がわかっているので、決められた時間にきちんと服用することが前提となります。しかし、漢方薬は未だにその吸収過程がはっきりとしていないものも多く、何百種類もある中から本当にその方の症状に合った薬を見つけるのはそれなりに時間がかかります。とにかく継続して飲んでもらうことが重要になるので、毎日一定量をきちんと飲んでいただけるように、服用タイミングについては工夫してお伝えしています。

たとえば漢方薬でいう「食間」は、もともと食事と食事の間に飲んでいるお茶の代わりにお薬を飲みましょう、といった考え方からきています。患者さんにはそのような話題と共に、食前に飲み忘れてしまった場合は「食後もしくは次の食事までに飲めば大丈夫ですよ」あるいは「気がついた時点で飲んでください」とお伝えします。

また、1日中外出していて2回飲めなかったといった場合には「帰宅時に1回飲み、寝る前にもう1回飲んでください」といった具合に、1日のうちに決められた回数をきちんと飲めるようにアドバイスすることも大切です。そうすることで患者さんのアドヒアランスは向上し、ご自身でも効果を実感しやすくなります。

さらに、きちんと服用していただくために、味についても前もってお伝えしています。「苦い」「辛い」「酸っぱい」「臭いがきつい」といった薬はあらかじめそのようにお話し、「頑張って飲みましょう」とお声がけすることで、患者さんは心の準備ができ、ある程度の覚悟を持って飲んでいただけるのです。どうしても飲めない場合には、冷ましたり凍らせたり、甘いものと混ぜたり、あるいは顆粒のままといった飲みやすい方法をお勧めするなど、患者さんそれぞれの状況に合わせて指導をしています。

漢方薬を継続して服用できるかは、医師の先生方の説明と同じくらい、私たち薬剤師による服薬指導も重要だと認識しています。そのためにも患者さんとの丁寧なコミュニケーションを心がけ、長期的な服用が実現するよう、尽力しています。

 

日々のコミュニケーションが、より良い「医薬連携サイクル」を生む

先生方とは、日頃から患者さんの情報を交換し合い、処方意図や漢方薬に対する知識・理解の共有をさせていただいています。また、そうした情報をすべての患者さんへの服薬指導に反映できるよう、薬剤師同士の情報共有も徹底しています。

このような意識からか、当店は医師と薬剤師、患者さんと薬剤師、さらには薬剤師同士が互いに要求や質問をしやすい環境となりました。日々のふとしたやりとりにおいても「先生方や患者さんの質問に適切に応えたい」という思いにつながり、知識向上への意欲を生んでいます。三方のコミュニケーションを通じて、いい循環が生まれているように思います。

また、先生の期待に応えるためのチャレンジのひとつが「医療機関主催の勉強会や学会の学術大会への積極的な参加」です。できる限りシフトを調整して、私だけでなく希望する薬剤師が平等に参加できるようにしています。

2014年度からはアイセイ薬局本社が主催する漢方研修も始まり、全国の薬剤師が参加しています。本社主導でこのような勉強会が開催されることは、アイセイ薬局本社の将来を見据えた人材育成に対する熱意の表れであると考えています。

当店でも、漢方薬・生薬認定薬剤師として認定を受けている4名に加え、残り2名の薬剤師もアイセイ薬局本社や他店舗のバックアップを得て、積極的に勉強会に参加しています。

 

漢方薬の保険適用に関する情報もこまめに共有

西洋薬では保険適用となる用法用量が添付文書などに明記されていますが、漢方薬では使い方によっては適応外も多く、処方される先生方も苦労される点かと思います。また、各生薬の1日量ごとに保険適用範囲がありますので、増量して処方したい場合には、保険請求に関して十分な注意が必要です。

しかし、その量についてはMAX値が明示されていないので、出してみないと返戻があるのかないのか正直わからない場合もあります。大体の目安はあるのですが、それを超えない限りは大丈夫かというと、保証できないのが難しいところです。

当店では、これまでの経験(実例)と知識の蓄積を活かして、保険適用範囲など現場レベルでの情報を積極的に先生方に提供し、処方の決定にお役立ていただいています。また、気になった点があればすぐに疑義照会を行い、確認漏れのないように努めています。

保険適用となるかどうかは、クリニック・薬局の双方にとって、軽視できない問題です。患者さんの処方に影響することなく、健全な保険請求となるよう、先生方との協力体制を築いています。漢方を希望する患者さんは少なくありません。しかし患者さんと接していて、漢方薬に対する情報量がまだまだ不足していると感じます。たとえば、どこに行ったら漢方薬をもらえるかとか、保険が適用されるのかどうか、またはなかなか気軽に足を運べないなどの状況もあるでしょう。今後はそうした患者さんの道標となり、“漢方のフラッグシップ店”となれるよう、積極的に情報を発信していければいいなと思います。

 

■ Doctor’s Comment

証クリニック神田 院長・横山 浩一 先生

アイセイ薬局駿河台店と医薬連携をさせていただく中で感じるのは、薬剤師のみなさんの向上心の素晴らしさです。特に、学会活動、勉強会への参加率の高さは目を見張るものがあります。薬局長の古谷さんの熱心さがほかの薬剤師のみなさんを動かしていますし、アイセイ薬局本社主催の漢方勉強会など、強力なバックアップ体制があります。

業務体制に関しても、厳密な生薬の品質管理をしていただけているため大変助かっています。漢方薬は、同名の処方でも出典の医書や草本書が異なると、生薬の組み合わせも変わります。同様に、製薬企業各社のエキス剤はそれぞれ出典が異なるため、同名処方でも内容が違います。私たち医師がエキス剤を処方する際は、生薬の内容を加味した上で指定するのですが、そこを理解されないことも多々あり、苦労していました。

しかし、アイセイ薬局は違います。私たちの大切にする部分を理解してもらえているので、同じ方向を向いて患者さんに対する医療を提供していくことができています。

医師と薬剤師がタッグを組んでの医療提供は、クリニックにとっても必須です。処方内容、飲み合わせ、過剰投与など患者さんの情報を集約して、問題があれば気づいてくれるのが薬剤師のみなさんです。ダブルチェックの防波堤として、今後もぜひ協力していただきたいと思います。

 


PROFILE

古谷 佳苗 氏
アイセイ薬局 駿河台店 店長/薬剤師 1989年城西大学薬学部卒業

趣味:茶道
第16回花月菴流で10年(まだまだ若輩者です…)。抹茶、煎茶を嗜んでいます。茶道を通じて育む“おもてなしの心”を日々の業務にも活かしていけたらと思います。

 

 


 

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