医院開業コラム
現場発!クリニックの人材マネジメント 第9回
2017.09.14
前回、医師に対する患者さんのお叱りは、スタッフレベルで止まっている可能性が多々あることをお伝えしました。またその内容はスタッフへのお叱りと同様に、開院当初から院長先生や医師を含む、全スタッフで共有することが重要であるとお伝えしました。今回は、実はスタッフは経営者に言っていないことがたくさんあることを理解してほしいという点についてお話します。
経営者は、自分はしっかりとした信頼関係を築き、現場を理解していると思っている現状にあります。実際、院長先生が「当院は問題ありません」と話してくださることも少なくありません。しかし、そう感じているのは経営者だけと言っても過言ではないのです。
スタッフは、自分自身これで良いのかと疑問に思っていたり、スタッフ同士が内部ではうまくいっていなかったり、もしくはプライベートで悩みがあったりと、大なり小なり日々現場では問題が起きています。クレームにはならずとも、お叱りを含めると1日の中で何件ものトラブルが生じています。それを経営者がすべて理解するのは、非常に難しく、診療やその他の業務で忙しい毎日において、すべてを把握するのは不可能に近いと思います。
以前にスタッフとの面談が必要なことはお伝えしましたが、面談時にスタッフがすべて話してくれるとは限りません。ではどのようにしていくべきか、経営者として以下の3つを常に意識しておく必要があると言えます。
まずaですが、人は組織内で言えないことでも、利害関係のあまりない組織外の人には話しやすいものです。ですから、スタッフの悩みを吸い上げる顧問のような立場の人や、外部コンサルタントがその立場を担っていくことをお勧めします。場合によっては、院長夫人がその役割を担う場合もあります。
bやcは「スタッフを疑ってください」というものではありません。これらは、スタッフの信頼を左右する重要な心得になります。「大丈夫」という気持ちには一旦ふたをして、「いつなんどき、何が起きるかわからない」という気持ちでスタッフたちを冷静な目で見てほしいのです。そのためには、まず心の準備が必要になります。
そして、たとえば急な退職願や勤務形態変更の申し出、スタッフトラブルなど、「まさか……」「急に何を言い出すのだろう」という事態にならないようにしてください。前もって心の準備をしておけば、焦ることなく対処できます。焦って対応する姿は、かえってスタッフたちからの信頼度を低くしてしまいます。
何か起こったときには、必ず理由があります。環境や時期、本人の気持ちや出来事などをしっかり理解し、次回は同じことが起こらないよう、対策を立てましょう。その繰り返しが組織の問題解決につながり、スタッフの信頼度をUPさせます。
また、院長自身の感情や考えだけではなく、視野を広げて判断をしていきましょう。「経営者は嫌われても良い、尊敬されることが大事」と私は伝えています。一歩下がって柔軟に対応ができる経営者が、組織を活性化させていくのだと思います。
この記事をシェアする