医院開業コラム
クリニック人事労務読本 第5回
2018.10.29
連載第5回は、従業員の労務管理における「服務規律」について解説してまいります。服務規律は労働者が組織の一員として守るべきルールであり、クリニックの適正な運営には開院時から必要なものといえます。なぜなら、クリニックは開院時から複数名の労働者を雇用するため、最初から働くための一定のルールが必要となるからです。
また、服務規律があることにより労使トラブルを未然に防止することができるのです。なお、労働者が10人以上の場合に作成が義務付けられる就業規則については後述いたしますが、ここでは開院当初に最低限定めておくべき服務規律について解説してまいります。
ひとつの例として喫煙があります。喫煙をしない院長からすれば、クリニック内での喫煙はもっての他でしょう。更には休憩中にクリニックの外で喫煙することも禁止したいという院長も少なからずいらっしゃいます。一方で院長自身が喫煙者である場合、クリニック内の特定の場所であれば喫煙を許可しているケースもあります。
ある労働者が前勤務先において、クリニック休憩室が喫煙可というルールのもとで働いていた場合、その者はそれが普通だと思ってしまっているかもしれません。反対に院長はクリニック内が禁煙であることは当然と考えているのにもかかわらず、院内は禁煙というルールを事前に明確にしていなければ、この労働者と院長の認識のズレが生じてしまいます。
それをきっかけに労使間の溝が発生して、労使トラブルに発展することになります。このように、院長が考える「常識・普通」という概念は残念ながら労働者のそれとは一致しないことがあります。そのため、クリニックのルールを明確にするために服務規律が必要になるのです。
但し、開業と同時にクリニックの実態に見合った完全な服務規律を作成することは容易ではありません。やはり開業してから数か月経ってみないと全体を把握することはできませんので、労働者とも話し合いながら、徐々にそのクリニックに合ったオリジナルの服務規律を作っていく必要があります。
そのため新たにルールを追加したり、過去のルールを修正もしくは削除したりすることを躊躇してはいけません。時には朝令暮改も院長にとっては必要な判断といえます。
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