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開業医のための「医院経営相談外来」

開業医のための「医院経営相談外来」 Q.6

開業医の先輩から「開院直後はお金が苦しかった」と聞きました。開業するにあたって、お金の使い方で気をつけるのはどのようなことでしょうか?

  • 医院開業のポイント

2016.05.11

クリニック開院直後は、収入が少ないにもかかわらず、家賃や人件費などの経費を支払わなくてはなりません。その結果、赤字になることが多いので、お金が減っていきます。

開院直後のみならず、開院後も、クリニックの業績が良いにもかかわらず、お金が不足しているドクターがいます。様々な原因がありますが、その一つに「お金を使うタイミングを間違えていること」が挙げられます。自分のライフステージを考えながら、適切なタイミングでお金を使うようにしましょう。

ドクターのライフステージとお金の関係

ドクターが開業してからリタイアするまでの期間で「ライフステージとお金の残高」の関連性をイメージ図に表しました。こちらを参考にしながら説明をします。

 

期間A:開業準備から開業直後

クリニックを開院するときに、自己資金ですべてまかなえることはほとんどありません。そのため、開業資金は金融機関から借りることになります。診療科目や診療方針によって必要な開業資金は大きく違いますが、借り入れをした瞬間は多額のお金が口座に入金されます。
しかし、そのお金は開業準備や設備投資などでどんどん減っていきます。また、開院直後は患者数が少ないにもかかわらず家賃や人件費などは支払わなくてはなりませんので、赤字になることがほとんどです。さらに、保険診療は請求した2ヶ月後まで入金されないので、一気にお金が減っていきます。
がんばって診療を行い、患者数が増えてくると黒字になってきますが、借入金の返済などが原因でお金が減ってしまうこともあります。預金口座のお金がどんどん減っていくのは大変なストレスになります。

期間B:安定稼働期

しばらく経って患者数が増えてくると、残高が増えてきます。借入金の返済やリース期間が終了するとさらにお金は貯まるようになります。しかし、このような状況と重なるように家計での出費が大きくなることがあります。具体的には子どもの医学部進学の学費や住宅の購入などです。

医学部進学の場合、塾や予備校などの経費も莫大になることがあるので、金融機関からの借り入れに頼ることもあります。また、住宅購入の際にも住宅ローンを組むことがほとんどです。

期間C:開業終盤からリタイア期間

学費を払い終えると、お金が貯まりやすくなり残高が増えていきますが、子どもが医学部を卒業して勤務後、クリニックを承継するときには新たな設備投資が発生してお金の残高が減ることになります。
そして、リタイアした後には収入はなく、お金は減っていきます。

個別の事情によってお金の残高推移は違いますが、この図を参考にして「ご自分はどのような推移になりそうか」「今どの位置にいるのか」を考えてみてください。

お金を使うタイミングを間違えると、大変なことに。

クリニックの経営が順調にもかかわらず、お金を使うタイミングを間違えたためにお金が不足してしまったケースを紹介します。

ケースA:開院時に無駄なお金を使ってしまった

クリニックを開院する時には、多くの場合、借り入れを行います。一時的ですが多額のお金が手元にありますので、無駄なお金を使ってしまうことがあります。内装や設備投資が過大になることが典型的な例です。クリニックでは病院と同じ診療は行わないにもかかわらず、高価な医療器械や手術設備などを購入してしまうケースが多く見られますが、必要なものを適切な価格で購入することが大切です。
また、医療に直接関係のない車や家などを購入するケースも見受けられます。

開院直後はお金が厳しくなることを前提に、開院時は必要最低限の物のみ購入するようにしましょう。最低人数のスタッフと設備で始めて、業績の推移を見ながら増員や追加の医療機器などを購入すると良いでしょう。車や家などは医業経営が安定してから購入するようにしましょう。様々な業者が様々な物の購入を勧めますが、意思決定は自分が責任を持って行いましょう。

ケースB:お金が必要になるタイミングが重なってしまった

子どもの私立医学部の多額の学費が必要な時期に、高額の自宅を購入したドクターがいます。医学部の学費を払うだけでも大変ですが、さらに高額の住宅ローンを返済する必要がありますのでお金が不足してしまいます。

こちらのドクターは医療法人を設立していますが、そのメリットを得ることができていません。医療法人を設立する目的の一つは、個人の高い税率と医療法人の安い税率の差を利用して、手元に多くのお金を残すことです。しかし、個人で多くのお金が必要なので、理事長報酬を高額にしなければならず、医療法人にほとんどお金を蓄えられません。 
学費の支払いのめどが立ってから家の購入を検討するなど、タイミングをずらすと良かったのではないでしょうか。

ケースC:あまりにも先のことを考えてお金を使ってしまった

将来の相続対策を考えて、賃貸マンションを一棟買ったドクターがいます。そのドクターには子どもが2人おり、長男には医療法人を相続する、次男にはこのマンションを相続すると考えて購入しました。購入資金は全て借り入れました。不動産所得は計算上黒字になり課税されるのですが、借り入れの返済などを考慮すると年間数百万円お金がマイナスになります。

子どもはまだ小学生です。2人とも医学部に行かせたいと考えていますが、進路は決まっていません。これから中学・高校の学費や塾代などがかかりますし、2人とも医学部に入学すると莫大な学費がかかることになります。現在でもお金が不足しているのに、さらに学費の負担がかかるので、何らかの対策を打つ必要があります。

これまで「無駄なものを買ってはいけない」と言ってきたように思われるかもしれませんが決してそういうことではありません。車や家、趣味に関する物の購入などは、生活の充実やモチベーションを上げるのに役立つものばかりです。そうすることによって、クリニックの経営にも力が入るというものだと思います。ここで言いたいことは、お金を使うタイミングを間違えないようにすることです。このことを頭の中に入れて行動するようにしてください。

 

※このコラムは、2016年4月現在の情報をもとに執筆しています。

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執筆者紹介

近藤 隆二

近藤 隆二
(こんどう りゅうじ)

医業経営コンサルタント
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会)
非営利団体 医業経営研鑽会・副会長
米国NLP™協会認定NLPマスタープラクティショナー

大手OA機器メーカーで12年、生命保険会社で12年勤務した後、医業経営のコンサルティングの仕事に携わる。「部分最適ではなく全体最適を考える」ことを貫き、さまざまな状況に応じたフレキシブルなコンサルティングを得意とする。コミュニケーションを密にすることで、それぞれのお客様にとって本当に良いことは何か、お役にたてることは何かを、常に考え続けている。
近藤隆二氏のホームページ「ドクターよろず相談所」はこちら

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