医院開業コラム
もやっと先生のための科目別開業ポイント 第1回
2024.05.30
ご自身のクリニック開業を目指す理由には、収益の増加や本当にやりたい医療を提供するためなど様々な理由があるかと思います。また、初めてのことで、分からないことも多く不安に感じているかと思います。今回は、少しでもやるべきことを明確にできるようにクリニックを開業する際に必要となる準備やスケジュールについて解説いたします。
クリニックを開業するために必要な届出・申請は、多々あり提出先もそれぞれ異なります。加えて内装設計などの各種準備も同時並行で実施していく必要があります。また、行政などへの届出・申請には提出期限がありますので、十分注意するようにしましょう。特に保険指定の申請受理が終了しなければ、保険診療を行うことができず、収益に大きな影響が出てしまいます。開院予定日(診療開始)から逆算し、スケジュールを組んでいくようにしましょう。
【クリニック開業のスケジュール】
クリニックの開業に必要な手順は、細かなタスクまでを含めると100以上もあると言われており、その内容は非常に多岐にわたっています。
今回は、クリニックを開業するにあたり、必要となるステップをおおまかな11の手順に沿って紹介していきます。
クリニックの開業に向けたあらゆる選択の基準となる経営理念と診療コンセプトの熟考は、成功のカギといえます。
経営理念とは、「どのような医療を誰に提供したいか」など、ご自身の想いや目標のことです。明確な経営理念を掲げることで、決断するための指針になりますし、スタッフが同じ方向を向いて行動できます。
診療コンセプトとは、細かな指針のことです。提供する医療の範囲や年齢・性別・疾患などの対象となる患者層、選択した立地が医療提供の場として適しているかなど、具体的に深堀していきましょう。
この工程をしっかりと行うことで、患者さんからの信頼が得られ、延いては安定した収益が得られるようになります。
クリニックの集患力や安定的な収益の確保などに影響する重要なステップです。一度決めた立地は容易に変更できないため、しっかりと調査や情報収集を行い、選定するようにしましょう。
選定したエリアの特性と診療コンセプトとの整合性を確認しましょう。
街の雰囲気や自宅からの距離、男女別・年齢層別の人口分布、潜在患者数、近隣の医療機関の状況を確認するとともに、将来性にも注目してみるとよいでしょう。
複数の候補エリアから診療コンセプトに適したエリアを絞っていくようにしましょう。
診療圏調査は、開業の候補地を検討するにあたり、欠かすことのできないマーケット調査です。1日に見込める外来患者数のポテンシャルを把握ができ、事業計画を策定する際に必要な指標になります。重要な要素ですが、数値だけではなく近隣医療機関の状況や将来性を考慮し、総合的に判断するようにしましょう。
開業物件の選定は、視認性、賃料条件、他入居テナントの業種なども確認したうえで、選定するようにしましょう。大通りでも1本路地を入った場所でも診療圏の数値は同じになりますので、注意が必要です。また、賃料は半永久的に発生する固定費ですので、高すぎて収益性を悪化させないかなど事業性に問題ないかを慎重に検討するようにしましょう。
最終的な事業計画を作成する際に、税理士の存在が必須となります。事業計画の作成のほか、資金調達や会計税務などクリニックの開業に必要な業務をトータルでサポートしてくれる重要なパートナーとなる存在です。税理士に財政面を任せることで、医師は診療に専念できますので、経営の効率化にもつながります。税理士は、医療に精通し、節税や税務上の留意点についてアドバイスしてくれる方を選定しましょう。
社会保険労務士は、スタッフ採用の際には選定するようにしましょう。開業後もスタッフの問題はついて回りますので、社会保険労務士の存在も重要なキーとなります。
事業計画の策定は、人材や資源、資金などの情報を数値化し、クリニックの開業の実現性や収益性を評価するための重要なステップです。金融機関から融資を受ける際には、この事業計画が必須となります。最初から完璧な計画を立てる必要はありません。計画に無理が生じた場合は、原因を追究し見直しをしていくことが重要となります。税理士など第三者の検証を受けながら、ブラッシュアップを重ね、最終的に現実性のある事業計画を策定しましょう。
必要な投資額が自己資金を超えた場合には、金融機関等から資金を調達する必要があります。調達する資金が過不足ないように事業計画を策定する必要があります。そのため、確定したコンセプトを基に必要な医療機器や内装工事の見積もりもとるようにしましょう。
設備にかかる資金のほかにも運転資金を検討する必要があります。開業してから一定期間は収益が上がらないことが予測されるため、人件費や賃料、水道光熱費など経営が安定するまでに必要と考えられる金額を算出し、運転資金として用意しておくようにしましょう。
内装設計は、経営理念・診療コンセプトを策定する際に込めた想いをレイアウトに反映していく工程です。設計する際には、患者さんのための空間であることも念頭におき、設計していきましょう。
クリニックの内装設計や施工には、建築士法・建築基準法・建設業法・バリアフリー法などの法律が関連します。さらに内装を決定するにあたり、医療機器会社も介入するため、医療機器の知識も必要となります。業者選定の際は、クリニック内装設計・施工の経験があるかなどを必ず確認するようにしましょう。
内装工事の内容や工事時間帯に制限がかかる場合があるので、不動産所有者(または管理会社)に確認しておきましょう。
医療機器の選定は、経営理念や診療コンセプトが明確になった段階で検討を始めましょう。
導入する医療機器によっては、床の耐荷重や電気容量の制限、サイズなど内装設計に影響が生じる場合もありますので、注意が必要です。また、納期が開業日に間に合うか、内装工事と並行しながら進めるようにしましょう。
また、導入したが使用していないといったことがないよう本当に必要か吟味したうえで、導入するようにしてください。過大な投資をしてしまうと、その後の経営を圧迫してしまう可能性もあります。
クリニックには、看護師や受付事務、臨床検査技師などさまざまな職種のスタッフがいます。採用する職種や人数、雇用形態など人員計画を策定する必要があります。給与が相場から外れないよう広告宣伝会社(求人会社)と協議しながら進めていくことをお勧めします。
採用面接は面接するだけではなく、書類選考や面接会場の準備、採用不採用通知など実施する必要もありますので、これら業務を実施してくれる業者を選定するようにしましょう。
研修は遅くても開業の2週間から3週間前から実施するようにしましょう。スタッフには、必ず、経営理念・診療コンセプトを共有するようにしましょう。流れは表に示していますので、ご参照ください。
【人材募集・採用・研修スケジュール】
開業したら、患者さんが来るというわけにはいきません。そのため、特に開業当初は新規の患者さんを獲得するためにも広告宣伝は重要なツールです。
WEB戦略であるホームページは、広い地域の方が閲覧できますので、広範囲での宣伝が可能となります。ただし、サイト自体を検索エンジンに認識してもらう必要がありますので、より検索されやすい構成にし、早い段階からの準備をしてください。開業の2ヶ月前には公開できるよう進めていきましょう。
開業前に実施する広告として、内覧会があります。院長先生やスタッフを知ってもらうことで、受診しやすい環境を作ることができます。院長先生は、お越しいただいた方と積極的にご挨拶してください。丁寧な対応を心がけることも大事です。
クリニックの開業には多くの届出や手続きが必要となります。特に重要なのが保健所に提出する「診療所開設届」と各地方の厚生局に提出する「保険医療機関指定申請」です。保険医療機関指定申請は、提出期限が月1回と定められており、受理されるまでに1ヶ月ほど要します。保険診療を開始する2ヶ月前に診療所開設届を提出し、1ヶ月前に保険医療機関指定申請の手続きをするケースが多いです。
個人事業の場合は、「個人事業主開廃業届」を所轄の税務署に、法人を設立した場合は「法人設立届」を所轄の税務者や都道府県、市町村に提出する必要があります。
スタッフ雇用関係として、「給与支払事務所の開設届」を税務署に、「健康保険等新規適用届」を社会保険事務所に提出する必要があるなど、労務関係の各届出も必要となります。
クリニックの開業には、届出・申請のタイミングといったスケジュール管理以外にも注意しなければいけないことがあります。注意しなければいけないポイントを4つほど挙げますので、注意して開業準備を進めてください。
この記事をシェアする