医院開業コラム
クリニック経営管理術 vol.1
2020.06.27
他のクリニックが経営においてどのような指標を把握し、どう生かしているか。クリニック経営に携わる方ならきっと誰もが知りたい情報かと思いますが、実際にはなかなか耳にすることがないでしょう。
そこで本シリーズでは、クリニック向けの経営分析ソリューション『CLINIC BOARD(クリニックボード)』を導入するクリニックの中から、経営で成功を収めている医師や経営管理担当者に、その“裏側”を取材。初回は、「医療法人梅華会」のCMO 村上英之氏にお話を伺いました。
梅華会は、兵庫県内に4つの耳鼻咽喉科クリニックと3つの小児科クリニック、そして東京都に内科クリニック(フランチャイズ)を展開する大型医療法人です。いずれのクリニックにも多くの患者さんが集まっており、今後も分院を増やしてさらなる規模の拡大を計画しているなど、まさにクリニック経営に成功した法人の代表例といえます。
同法人でCMOを務める村上氏は、クリニック経営を考える上で、さまざまな経営指標の集計と分析を行っていると言います。
「各クリニックで毎月1回、売上、来患数、レセプト単価、平均通院回数と平均診療単価、予防接種の実施数、来院経路などを集計しています。集計したデータの活用例を挙げると、来患数は採用計画を立てる際に参照しています。
当法人は耳鼻咽喉科と小児科のクリニックを運営しているので、来患数に季節変動があるんです。それを“この時期はなんとなく忙しい”と曖昧に捉えるのではなく、何月にどのくらいの人数が来院しているのかを数字で把握し、クリニックごとに患者数の“伸び率”もチェックします。これらを総合的に考慮することで、来年のおおまかな患者数を季節ごとに予測できるようになり、それに応じた適正な人数のスタッフを採用できます」
クリニックごとのさまざまな経営指標を把握し、分析を行っている梅華会ですが、意外にもその集計や活用方法には不安があったと村上氏は話します。
「先ほど挙げた項目は、電子カルテから集められる情報の中で、経営を考えるにあたって必要と思われるものを独自にピックアップしています。そのため『もっと違う観点でデータを集めれば、より有益な気づきがあるのではないか』という漠然とした不安がありました」
また、集計や活用だけではなく、管理においても課題があったそう。
「集計した各経営指標は、クリニックの担当者がGoogleスプレッドシートに記録し、別担当者がダブルチェックを行うという形で管理していました。担当者によって差がありますが、この作業にかかる時間は2時間ほど。これが毎月発生しますから、負担は大きかったですね。
あとは、人が手作業で入力するので、セルを間違えて入力してしまうなどのミスがどうしても発生してしまいます。間違いを探すのにもまた時間がかかり、改善の必要性を感じていました」
経営指標の集計や管理に課題を抱えていた梅華会が出会ったのが、株式会社エムティーアイが開発する経営分析ソリューション『CLINIC BOARD』です。2019年の春頃から約半年間テスト利用し、その後正式導入に至っています。
「『CLINIC BOARD』の魅力は、クリニック経営に生かせる経営指標を提案してくれることはもちろんですが、一番は現場の担当者の負担を軽減できることです。経営指標の管理目的とは関係なく各クリニックで行っている“レセプトのオンライン請求作業”で自動的に割り出されたデータを本部が回収し、一括して『CLINIC BOARD』に入力する流れにしています。そのため、現場の担当者は入力作業にほとんど時間を割かずに済むようになりました」
さらに、村上氏は『CLINIC BOARD』の導入によって患者さんのリピート率を把握できるようになったことも収穫だと話します。
「『CLINIC BOARD』は、患者さんのIDや来院回数からリピート率を瞬時に割り出してくれるんです。私たちは、治療が終了してもまた別の機会にリピート利用してくれる患者さんのことを“ファン患者”と呼んでいます。クリニックを気に入って『何かあったらまたこのクリニックにかかろう』と思ってくれている方々ですね。新患を呼び込むのは既存の患者さんへのアプローチに比べて5倍の労力がかかるといわれていますから、効率的な集患には、このファン患者を多くつくることが非常に重要です。この人数を明確にできたのは、大きなメリットでした」
梅華会では『CLINIC BOARD』で集計したリピート率などのデータを活用して以下のような表を作成し、さらに詳しく患者さんの動向を分析。これにより、重点的にアプローチすべきターゲットを明確にしたり、より効果的な集患対策を考えられたりするようになったそう。
そして上記が、各ブロックの売上がクリニック全体の売上に占める割合をまとめたものです。これを見ると、ファン患者である“R4F4ブロック”の売上構成比率は人数比率が15%しかないにもかかわらず、突出して高いことがわかりますよね。やはり、ファン患者をつくることが重要であると考えられます。
それから、私たちが着目しているのが“R1F1ブロック”、すなわち数回の来院でクリニックから離れてしまった患者さんです。このブロックに分類される方々の来院理由を必ず確認しています。例えば、風邪の感冒ならリピートがなくても不思議ではありませんが、継続してクリニックにかかる必要があるアレルギー性疾患の治療ならリピートがないのはおかしい。そうやって、細かな内容までしっかりチェックします」
そして村上氏は、クリニックごとに表を作成して数値を比較すると、顕著な違いが出ると教えてくれました。「患者さんが根づきやすいクリニック」と「そうでないクリニック」が見えてくると言うのです。
「この差が明確になれば、ファン患者が多いクリニックを分析することで患者さんに評価されるポイントを把握できます。そのポイントを他のクリニックに共有すれば、全体の底上げにつなげられるというわけです」
最後に村上氏にお聞きしたのは、『CLINIC BOARD』の評価と今後への期待。『CLINIC BOARD』が、よりアグレッシブかつ結果を出せるクリニック経営の支えになる可能性について言及してくれました。
「『CLINIC BOARD』には、おおむね満足しています。先に触れたように、これまで確認できなかった経営指標を追えるようになったこともそうですが、動作が非常に軽くてストレスフリーに作業できること、見やすさも理由です。それから、特にテスト利用期間はサポートにもお世話になりました。こちらの質問に丁寧に答えてくれたので、心強かったですよ。
期待することはたくさんありますが、まずはデータの活用について積極的にアドバイスしてもらえるとありがたいですね。数字だけ見ても、それを踏まえてどういうアクションを起こせばいいかわからない方は少なくないはずですから。あとは、せっかくクラウドで顧客クリニックのデータを集めているので、その平均値を提供してもらえるとうれしいです。地域や開業年数別の平均値があれば、経営の指針になるでしょう。今後はこうしたコンサルタントに近い役割も担ってもらえたら、クリニック経営者にとってもっと頼もしいパートナーになると思います」
今までの電子カルテ・レセコンの集計機能では、自診療所の状況を十分に把握することが難しいと感じていました。 今まで把握できなかったり、把握するのに手間と時間のかかっていたりした自診療所のデータを、クリニックボードでは簡単に把握することが可能です。 また、重要指標を定量的に把握することで、診療所経営の改善施策を検討し、実行することが容易になります。
詳しくはこちら https://clinicboard.jp/
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