医院開業コラム
事務長 解体新書(アナトミー) 第6回
2019.11.07
前回は、事務長に必要な資質と能力についてお話しました。事務長は、何ができるのかよりも、人間性や共感という資質に重点を置くことが大切であることを、知っていただけたかと思います。今回は、採用した事務長の報酬と評価についてお伝えしていきます。
通常のクリニックスタッフの報酬(給与体系)は、年次や能力(経験)に応じて上がっていくことが多いかと思います。また、有資格者(看護師や理学療法士など)は医療スタッフよりも高い給与で設定されているのではないでしょうか。全国約10万件あるクリニックの給与体系は、クリニックの求人ページや転職サイトなどで、ある程度「基準値」を知ることができますが、事務長となるとまずありません。なぜなら、事務長を採用しているクリニックが少なく、また複数の事務長を置いているところがないため、1人採用できれば掲載する必要がないからです。
また、事務長は看護師や理学療法士のように有資格者ではありませんが、応募してくる方はこれまでの職歴があり、ある程度社会人としての経験を有している人が多いと思われます。では、いくらの報酬で募集するのが良いのでしょうか。募集時の提示金額は「30代 400万円~600万円」といったように、幅を持たせた募集要項が良いと考えます。大きな病院の事務長であればそれ以上の給与水準があるかもしれませんが、クリニックの事務長は大病院ほど高くはありません。前職の経験や応募に対する意志の強さ、院長先生から事務長に求める仕事や成果に応じて決められると良いでしょう。
事務長の給与体系は2種類に分けることができます。一つはクリニックスタッフと同じように月給制であり、もう一つは年俸制です。この後の事務長の評価にも関係しますが、おススメは年俸制です。決められた定型業務より、都度成果を求められることが多い事務長職では、事務長自身が安定した金額を年間で保障されることやモチベーションにつながることで、クリニック側でも経営計画が立てやすくなります。
もちろん、年俸制のデメリットとして、業績や成果によって左右されることはきちんと説明しておかなければなりません。事務長採用時に、どちらにするのかを事前に決めておくまたは採用時に選択できるようにしておくことが必要です。
クリニックにおける事務長の立場は、一般企業に例えると「管理職」にあたると考えます。たくさんのスタッフと院長先生の橋渡しとして問題解決や情報収集を行い、また院長と一緒にクリニックの方向性を考え、達成に向けて動くことが求められています。
直接的にクリニックのオペレーションに入るわけではありませんが、経営業務の一翼を担うことも考えると、事務長に求めるものは「成果(結果)」にフォーカスすることが大切です。
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