医院開業コラム
クリニック経営者のための医療ICT活用メソッド 第6回
2018.12.09
クリニックには、レントゲン(単純撮影)をはじめ、内視鏡やエコー(超音波)、心電計、眼底カメラなど、さまざまな医療機器(通称、モダリティと呼ぶ場合もあります)があります。紙カルテの時代は、これらの医療機器から出力された情報(医用画像や検査結果)をカルテに直接貼ったり、挟み込んだり、または別途用意したファイルにまとめるなどして保管していました。
一方、電子カルテを導入した場合は、医用画像や検査結果を管理するための場所がなくなってしまうため、新たに画像を管理するシステムを導入する必要があるのです。これらの医用画像や検査結果を管理するシステムを、診療所では一般的に「画像ファイリングシステム」と呼んでいます。
この画像ファイリングシステムは現状、導入する電子カルテメーカーによって対応が異なります。電子カルテの一機能として画像ファイリングシステムが内包される場合と、電子カルテと接続する別の独立したシステムと追加で導入する場合がありますので注意が必要です。
医療機器から出力された画像情報の形式は、「DICOM」と「非DICOM」の2種類に分かれています。DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)とは、医用画像データの国際的な標準規格で、画像データとともに患者さんのプロフィール(氏名、生年月日、ID)と撮影日時などの付加情報を加えて保存するほか、画像情報の通信方式が定義されています。
画像情報がDICOMに準拠していれば、異なる医療機関の間での画像情報の伝送や交換が可能です。また、遠隔地間での共有化なども簡単に行えるようになります。現在、多くの医療機器の画像情報が、このDICOM形式を採用しています。
しかしながら、なかにはDICOM形式に対応していない医療機器も存在します。その場合は、元の画像情報をDICOM形式に変換する装置が必要です。この装置は「DICOMコンバータ」あるいは「DICOMゲートウェイ」と呼ばれ、この装置を利用して情報を変換してから管理することとなります。
外部の検査センターに依頼する血液検査などの結果情報は、電子カルテに管理する機能を持っている場合が多いです。そのため、一般的には電子カルテ内で管理を行います。生化学検査や血液検査などに代表される数値情報は、時系列で情報を見たり、グラフ化したりすることが可能です。
かつて紙カルテ時代に、カルテの裏表紙に1枚1枚貼っていた作業がなくなりますし、データの閲覧性、加工性も格段に向上します。また、患者さんに検査結果を説明する際にも、大きな効果が期待できます。
検査結果のデジタル管理では、“その情報を2次利用するかどうか”が重要です。血液検査は、「院内にある複数の検査機器から出力されたデータ」と「外注の検査センターの検査結果データ」に分かれている場合もあり、それらの情報を一元管理したい場合は、電子カルテの機能を利用するのではなく、専用の検査結果管理システムの導入をお勧めしています。新たにシステムを導入するにはコストが必要なほか、連動する医療機器ごとに「接続コスト」が発生します。
一方、データを2次利用しない場合は、紙に出力した検査結果をスキャナで取り込んで電子化(PDFやJPEG)し、必要に応じて電子カルテから参照するという運用でも問題ないと思います。これにより、医療機器との接続コストを抑えることが可能です。
電子カルテの導入に合わせて画像ファイリングを導入し、医療機器との情報連携を効率的に実施している診療所では、「診察から検査・診断、患者への説明」という一連の流れがスムーズになります。電子カルテ、画像ファイリング、そして医療機器との連携は、診療所のIT化のメリットが分かりやすい部分であるといえるでしょう。
これまで紹介してきた画像管理には、ある程度のコストがかかるため、費用対効果を十分に検討して取り組む必要があります。その際のポイントは「連携する頻度やニーズが高いものから着手すること」です。何でもデジタル化して管理すれば効率的かといえば、そうとも限りません。今回ご紹介した指標をもとに、システム導入や医療機器の連携を検討していただければと思います。
【医療機器、画像ファイリング、電子カルテの関係】
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